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□嫌わないで
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どんっと壁に押し付けると、ゼロスは軽く咳込んだ。


「ゼロス」
「…何だよ」
「ちゃんと説明して」
「…っ」



彼が目を反らそうとしたので、軽く威すつもりで壁を殴った。
ゼロスは予想以上に驚いて肩を震わせた。

「その…、」
「何?」
「えっと…。だから…」
「…」


じわりと彼の目尻に涙が浮かんでくる。
でも、そんな事では許さない。

「泣いてちゃ、判んないよ」
「だって…っ、はに…っ」
「俺が、何?」


ぎゅっと抱き着かれる。
予想外の出来事に、不覚にも戸惑ってしまった。

「この前、ベタベタするの、嫌がった…から…っ」


そこではっとした。


確かにこの前、俺はベタベタするのを嫌がった。
けど、それはいつもの事。
皆が居る手前、加減が出来てなかったのかもしれないが、普段のような馴れ合いのつもりでやった事。


知らず知らずに俺はゼロスを傷つけてしまっていたらしい。

「はにぃが、嫌がる事…っ、したく…ないから…、っ」
「ゼロス…」



名前を呼ぶと、涙で潤んだ瞳が俺を見上げた。
俺は彼の涙を指で軽く拭ってあげた。


「ごめん。…その、皆の前で控えてくれたらいいから…。…俺、ゼロスに抱き着かれたりするの、すっげぇ嬉しいから」
「…っ、うん…」
「だから、泣かないで」
「はに…」



ゼロスは胸の中に埋まった。

いつか、ゼロスが安心するって言ってくれたっけ。
そんな大層なモノじゃないけど、お前が良く思ってくれるならこれ程嬉しい事はないと思う。


俺、ゼロスに負担かけてばかりだから。



「ゼロス、そろそろ戻らないと皆が心配する」
「…うん」
「行こ」


ゼロスが俺から離れる。
目が少し腫れている。

…俺のせいだよな、ごめんな。



「ゼロス」
「…何?」
「今度、イイ事しような」


かぁっと赤面するゼロス。
俺の服をきゅっと握って俯く。



はは、可愛い…。





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