銀魂へ

□はぴば銀さん
1ページ/2ページ






「…ん…?珍しいな、誰もいねぇのか」


夕方、目が覚めると家はがらんとしていて、前まで“当たり前”だった風景のはずなのに少し心細くなっちまう。

昔とはだいぶ変わったな、なんておっさん臭い言葉が自然にでてくる。


ふいに、玄関からババァの声が響いた。


「銀時ぃ、居るなら返事しなっ!!」
「るせーよババァ。今何時だと思ってんだ」
「とっくに日は傾いてんだよ、このプー太郎」
「ぷううう!?銀さんいつプーになったんだよ。冗談は顔だけにしろよクソババァ」



ばぁん。


盛大な音と共にババァが乗り込んできた。
キモい顔が更に拍車をかけてキモくなってんぞ。

「んだよ、金ならねーぞ」


ババァを見ずにそう告げると、奴は俺の右手を問答無用で掴んだ。

「来な」
「え?ちょ、何!?デートなら他あたれよっ!!」
「誰が好き好んでお前なんかとデートなんてするんだい。無駄口叩いてないでさっさと歩きな」


ぱっと手を離されて痛みに半分目を潤ませ、妖怪の背中に悪態をつきながら後をついていく。
…つっても、着いた所は万事屋の下…つまりババァんとこのスナック。



ぱーんっ


ドアを開けた瞬間、乾いた音が響き思わず目を閉じてしまう。

細くて柔らかい何かがはらはらと頭に落ちてくる。
恐る恐る目を開けると、


「…紙…テープ…?」

目で追っていくと、楽しそうに笑う皆。


「銀時、誕生日おめでとう」
「銀さん、おめでとうございます」
「また一歩ジジ臭くなったアルな♪」

…そっか、俺今日誕生日だ…。

「…お前ら…」


あ、目の前が霞んで…


「お邪魔しやすぜィ」
「万事屋、いっちょ前に誕生日らしいじゃねぇか」
「アホらし…。子供かよ…」
「まぁまぁ土方さん。たまにはいいじゃないですか。あ、旦那、誕生日おめでとうございます」


あれ、なんだろ。
目の前にゾロゾロと会いたくない連中が陳列されていく。
夢?
もしくは、目の前が霞んでいる所為?



「わ、どっから湧いてでたアルか税金泥棒共!!」
「んだとチャイナ。ちょ、表でろィ」
「望むところアルっ!!!」


あれ、何だろこの状況。
さっきまで確かに『銀さんの誕生パーチー』みたいになってた筈なのに。
皆道逸れちゃってるよ。


「…その、旦那、スミマセン」
「いや、判ってたよ。判ってた筈なんだよ。このメンツが揃った時点で、どうせグダグダしちまうんだよ…。…なぁジミーくん」
「僕はジミーではなく、山崎です。…何ですか?」
「なんか頂戴よ」



すっと右手を差し出すと、ジミーくんは苦笑して小包を差し出した。


「はい、僕達からです」
「違…、そぉじゃなくてよー。銀さんはお金が欲しいんですぅ」
「…え、…」
「ちょ、銀さんっ!?山崎さんに失礼じゃないですか!!すみません」
「あ、いや、何となく予想はしてたし…」


ちょ、あれ。

また俺の事無視するんだ皆…?


あくまで今日の主役って俺だよ…ね…?

ちょっとちょっとぉ!?



「…おめでと」

ぽんっと肩に手を置かれ、俯き気味だった顔をあげるとそこには多串くん。


「…お前だけだよ、俺を判ってくれんの…」
「…は?」
「多串くうううんっ!!!」
「誰が多串だこらああああああ!!!」



バキィ。




…俺の誕生日って…?




→あとがき
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ