銀魂へ

□思い…
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銀ちゃん。
私は、新八や姐御、歌舞伎町で知り合った皆、…そして、貴方と過ごせた事、幸せでした。
…できれば、最後まで笑って過ごしたかった。
生きて生きて、最後に貴方の腕の中で死にたかった。

…こんな事、銀ちゃんに言うのは恥ずかしいけどね。


私、銀ちゃんが大好きだった。
銀ちゃんが、私の全てだった。


…もう少し、貴方と甘い甘い夢を見ていたかったなぁ…。




「銀ちゃん」
私は、銀ちゃんから静かに離れた。
貴方は、今までに見たことがない程、悲しい顔をしていた。
涙を、流していたんだ。
…泣かないでって言っても、貴方は泣いてしまう。
「気が変わったら、迷わず私を殺すヨロシ」
「お前まだそんな事…」
「二人の為ネっ!!」
私が叫ぶと、銀ちゃんが口をつぐむ。
「二人の、幸せの為ヨ…」
そんな顔、見たくなかった。

私は涙を堪えきれなかった。
私は、まだ貴方と夢の続きを見る事ができるの…?

貴方は…、
まだ、私と夢の続きをを見てくれますか…?

「神…」
「私、顔洗って来るネ!…銀ちゃんも洗った方が良いヨ」
私は銀ちゃんの言葉を強引に遮って、洗面所まで走った。

銀ちゃんと離れなきゃいけないのは、私が夜兎だから?
夜兎は、人間に恋をしてはいけないの??


私は顔を洗って、鏡の中の自分を覗いた。
そこには、涙と水道水で濡れた自分の顔が映っている。
…泣いちゃ、駄目だ。

タオルで顔を拭いて、パンッと両頬を叩く。

私は、リビングへの一歩を踏み出した。






昼。
銀ちゃんを避け続けていた私は、万事屋に帰った。
キッチンからいい匂いが漂ってきている。
「ただいまアル」
キッチンに居る銀ちゃんには聞こえなかったみたい。
銀ちゃんはケーキと白い粉を交互に見つめて、何度もため息をついていた。
「ケーキ、おいしそうネ」
ビクッと銀ちゃんの肩がはねた。
銀ちゃんは急いで白い粉を懐に隠す。
私はそれを見ていたけど、わざと気付かないふりをした。
「喰わせてやるから、向こうで待ってろ」
「…うん」


リビングに行く前にちらっと振り返ると、苦しそうな銀ちゃんの顔が見えた。
でももうすぐ、もうすぐその苦しみから貴方を助け出せる。




暫くリビングで待っていると、銀ちゃんがケーキを二つ持ってきた。
小さいカップに銀ちゃんの大好きなチョコレートで彩られたケーキ。
「わぁ、美味しそうアル!!」
私から、自然に零れる笑み。
銀ちゃんも、少しだけど笑ってくれた。
私は一口、口に入れる。
「銀ちゃ…コレ、甘すぎるヨ」
「素直に美味しいって言えよ」
「…ご、ごめん」
涙が溢れ出してくる。
これで、最後。
でも、何か変。

…凄く、眠いんだ。

「銀ちゃ…ッ」

『…悪ィ』

っ!?
一気に青ざめる私。


銀ちゃんが…、愛しい人が、吐血している。

「…ッどうしたアル銀ちゃん!」
睡魔と必死に戦いながら、私は銀ちゃんの隣に行った。
「ごめん、ごめんな…。俺には、お前を殺すなんて…」


まさか…ッ!?

「銀ちゃんックスリ飲んだアルか!?」

「悪ィ…」

バタッ。



静かになった。
時計の秒針の音が煩い。

……。

…。



「ッ銀ちゃぁああぁぁんっ」












…私も、死のう。


ふらふらとした足どりで、私はキッチンに向かった。
でも、白い粉なんて見当たらなかった。


…?

目に留まったのは、白い封筒。

「何ネ、コレ…」
開くと、銀ちゃんの少し雑な文字が並んでいた。



神楽へ。

まず、ごめんな。
お前がコレ読んでるって事は、俺はもうあの世へ行っちまった後だろう。
でも、これで良かったんだ。

…お前が助かったから。

新八には、解雇とババァにお礼を言うように言ってある。
ちょっと口論になったが、アイツも聞き分けは出来る子だから。

お前は、早く逃げろ。
俺が命張って守った大事な体、無駄にすんじゃねぇぞ。







「…銀ちゃ…」
私は泣いた。
そして、銀ちゃんの所に走って戻った。

「…銀ちゃん」

返事はない。
でも、笑ってくれた気がした。

…ごめん、銀ちゃん。
私、やっぱりそっちに行く。

私は銀ちゃんの柔らかい唇にそっとキスしてそのまま舌を入れた。
甘い味に混じって、苦いモノがある。

銀ちゃん、この味隠す為にこんなに甘くしたんだ。

暫くして、心臓の動きが止まっていく感覚がしだした。
私の口から血が流れて、銀ちゃんの頬を伝っていく。

私はそっと唇を離した。

「…ッ!?」
直後、激痛が全身を走り、立っていられなくなって銀ちゃんの上に倒れた。

痛い…痛いッ!!

私は銀ちゃんの顔をそっと撫でた。

「…ぅ…ッぃ、痛いヨ…銀ちゃ…」


そのまま意識を失った。














「…んッ!!神楽ちゃんッ!!!」
「…ん」
誰かに呼ばれたような気がして、目を開けた。
白い世界が見えた。

急に新八の顔が映る。

「っ神楽ちゃん!?僕の事判ります???」
「しん、ぱ…ち」
「良かったぁ!!本当に…。看護婦さん!神楽ちゃんが…」
新八が走って出ていった。

看護婦さん…?
じゃぁ此処は…病院?

「な、何であたし…、助かってるネ…」


辺りを見渡すと、テレビの隣にあの封筒が置いてあった。

もう一度見ようと再び開く。
鮮明に蘇る記憶。


…え?

小さくて気付かなかった最後の文。




追伸。
つっても、こっちがメインだ。

愛してるぜ。





「っごめんなさい、ごめんなさいッ!!」

私、馬鹿だ。
死んでしまおうなんて思ってしまった。
ごめんね、銀ちゃん…。

私は白い壁で切り取られた、遠く続く快晴の空を見上げた。




銀ちゃん、私、ちゃんと生きてるよ。

だから、ちゃんと私の事、見守ってよ…?







→あとがき



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