銀魂へ

□動揺
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…夢を、見た。

まだガキだった俺にとってそれは、言いようのない恐怖そのものだった。

アイツが、他の男と楽しそうに話している…。

俺以外の人を見て。
俺以外の人と笑い合い。
俺以外の人と手を繋いでいた。


目が覚めた時は、夏じゃないのに全身汗だくだった。
…気付くと、もう昼をまわっていた。


妙にリアルだったその夢は、俺の平常心を容赦なく蝕んだ。


…とられる。

これがもし何か得体の知れない危険の報せだとしたら。


…回避できるのか?



…いや、待て。
深追いは危険だ。
それ以前に、これは夢。
アイツが俺を裏切るなんて、有り得ない。
…あってほしくない。


それでも確かめたくて、自然に携帯へと伸びる手。

数秒でアイツは出た。


『もしもし』
「…俺、だけど」
『あ、沖田?どうしたの』

電話の向こうは、がやがやと煩い。

「特に用はないんでさァ。…その、声が聞きたくなって」
『沖田らしくないヨ。何かあったアルか?』
「いや…」
『神楽ちゃ〜ん。早く〜』
『ちょ、待つアル。今電話中ヨ。…ごめん沖田、また後でかけ直すネ…』


プツン。

男の声だった。

夢の残像が、脳裏を支配した。
恐怖が、再発した。


電子音しかしなくなった携帯を閉じて、ベッドに叩きつけた。

アイツは今、何処なんだ。
何してんだ。


「畜生ッ…俺、格好悪ィ」

俺はため息をついて横になる。
何もする気がおきなかった。
そして何かに吸い込まれるように、再び眠りについた。





「いきなり呼び出して何?」
「あのさ、俺…」
桜の木の下。
ひらひらと舞い落ちる桜の花びらに包まれて、俺はアイツに告白した。
アイツは真っ赤になって、俯いて、それから。

「…私の事、捕まえててネ」

そう言った。

嬉しかった。
返事を聞いてすぐ、彼女を抱きしめた。
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