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□放課後戦争
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ひょっとしたら。
あれは、…。



「ゼロス、帰ろうぜ?」
「あ、うん」


放課後。
幼稚園から大学まで全てを担う附属の学校。
わざわざ大学まで迎えにきてくれたのは、俺さまの友だ……じゃなくて、彼氏(そう呼ばないと後が恐い)だった。

何故この歳でまだ卒業できていないのかというと、勿論学力の問題じゃない。
断固違う。
ただ、出席日数が足りないだけだ。



「ほら、急げ。寮まで競争っ」

楽しそうに走っていく後ろ姿を必死に追い掛ける。
あぁ、なんて幸せなんだろうと、とても老人くさい事を思いながら。


寮の玄関に着いた頃には俺さまの息はあがりきっていて、酸素を取り込もうと何度も荒く呼吸を繰り返した。
そんな俺さまを見つめる瞳。


「だっせぇ。ゼロス、もう歳なんじゃね?」

それ、普通本人に言うか?
つーか俺さま先輩ですよ、敬いなさい。


「…先、行ってて…、っ」

尋常じゃない心拍数の中、俺さまは一言そう言った。

きついのはこれからだ。
中学から全寮制って事もあって、何段も何段も、そりゃもう天国へ続いてんじゃないかと思える程長い階段が待っている。

彼はふぅっとため息をついた。
このやろー、やれやれといった風にあからさまにしやがる。


「一緒に行こうぜ?」

手を差し出してくる。
つーか、何で疑問形?
彼の瞳は意地悪く光っている。
『無理ならいいんだぜ、ご老人さま?』
明らかにそう訴えていた。


なめやがって…。



途端に怒りやら何やらが沸々と沸き上がる。


「はっ、余裕ぶってられんのも今のうちだぜ?」

言葉ではそう言うものの、この段数を駆け上がった事はない。
正直、自殺行為だからな。


「へぇ、この階段をダッシュで昇る気?」

面白い事言うね、とハニー。

面白い事?
何言ってんの。


「お前もやるの」
「は、俺!?」
「そ、ハニーもやんだよ」
「いや、俺は…」

と口ごもるハニー。


「出来ねぇの?うわ〜、俺さまゲンメツ〜」
「…っ、いー度胸じゃねぇかゼロス…、その勝負乗ったぜ。俺の部屋のドアに先にタッチしたら勝ちな」
「後悔すんなよ?」
「当然。負けた方は明日一日奴隷な」
「ど、…どれい…?」


まじか。
そりゃ、…やべぇな。

でも、この様子じゃ取り消せねぇか…。


くそぅ、大人なめんなよっ


「了解」

ふっと俺さま達は笑い合う。


「あ、リーガルせんせ」
「ん、どうした?」

近くをリーガル先生が通ったので、ちょうどいいやとばかりにこちらに呼んだ。


「よ〜いどんって言って頂けます?」
「はぁ?」
「いいからいいから」



ハニーも一緒に急かし、先生はこほんと咳ばらい。

「よーい、…どんっ」


ばっと駆け出す俺さま達。
スタートダッシュは、若干俺さまの方が速かった。

胸の中で小さくガッツポーズをし、そのまま走り続ける。






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