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□雪とお前と…
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笑って、笑って。

そしたら、幸せがついてくるから。




長い長い冬がやってきた。
ゼロスの嫌いな、冬。

とうとう雪なんかも降ってきたもんだから、ゼロスは一切外出しなくなった。



「…」

彼は全ての窓をカーテンでかたく閉ざし、虚ろな表情でソファに座っていた。

あ〜畜生。
何か元気づけねぇと。



「ゼ〜ロスっ」

俺が笑顔で呼び掛けると、彼はゆっくりとこちらを見た。
あれ、なんか…痩せた?

…じゃなくてっ!!


「ゲームしよっか」
「…うん、いいよ」



彼がトランプを取りに行っている間、俺はずっと考えていた。

ようは、冬だという事を忘れさせればいいんだよ。

つーか、他の事で頭をいっぱいにすれば…。



そうこうしているうちに、ゼロスはトランプを持って帰ってきた。

「何する?」
「ハニーが決めていいよ」
「…そう?」



あ〜畜生〜。
何かねぇのかよ、何か…。


「ゼロス、やっぱり、“大人の遊び”しようかっ」

ゼロスの顔が赤くなる。
よし、グッジョブ俺っ


と思ったら、彼は俯いた。

「ごめん、そういう気分じゃない…」


あっさり撃沈。


う〜、どうしたものか…。


「ごめんね」

考えこんでいた俺に、彼は消えてしまいそうな笑顔を精一杯向けて謝った。

「い、いや、気にすんなっ!!誰だってそーいう時はあるって」

と言ってはみるものの、彼の気落ちは尋常なものではないため、ガラにもなくネガティブだ。


「俺さま、こんなに弱い人間だったんだなぁ…」
「っそれはお前の過去が…っ」


ゼロスは悪くないんだと言おうとした俺に、彼はすっと手で“ストップ”のジェスチャー。

そして、

「ありがと」


短い感謝。



言いかけた言葉は、すでに喉に逆流して飲み込まれていた。


何をすれば…。
何をすれば、お前はそれから解放されるんだ…?

「…俺、こんな事しかできないけど」


そう言って彼を抱き寄せた。

暫く、静かな部屋に彼の鳴咽だけが虚しくこだました。








→あとがき
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