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□暇
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「暇ぁ」
「…」
「暇、暇、暇ぁっ」
「ゼロス、静かにしてろって」


夜。

今日は野宿だ。
そして、俺さまの嫌いな見張り当番が回ってきた。
なんで嫌いなのかと問われると、『暇だから』である。


元々、じっとしているようなタチではない。
重々承知している。

だからこそ、暇というのは天敵に値するのだ。



「何かしようよ」
「何かって何だよ」
「なんでもいいから〜」


ぱちぱちと威勢よく燃える炎を見ていたハニーの瞳が、すりすりと抱き着いていた俺さまを捉えた。

「久々に、どう?」
「へ?」
「ゼロス、たまってんじゃないの?」
「い、いや、別に…」


やばい、覚醒した。

ハニーがどこか妖艶な、大人の笑顔を見せる時は、決まって頭の中が放送禁止状態の時だ。

彼の思考回路は今18禁なんだ。

俺さまは彼から少し離れた。

「えと、今日はその、やめようよ」
「どうして?」
「…服、汚れちゃうし、…地面は痛い、し…、」

一生懸命弁解する俺さまを、にこにこと見つめるその笑顔。
言い訳が無駄に終わってる気がする…。


「じゃあ今日は、俺の膝の上でしようか」
「っ!?ちょ、何言…っ」
「大丈夫」
「何がだよっ」



やべ。

そう思った瞬間、俺さまは彼に抱きすくめられた。


「う〜そ」
「…はい?」
「だから、嘘だってば。ゼロス可愛い〜」
「っ!?!?」



う…そ…?

嘘って…。


「ハニーの馬鹿ぁっ」
「痛…っ」

どんっと突き放した俺さまは、顔も耳も真っ赤で、体温が上がりきっていた。

か、覚悟とか、してたのに…っ


「ごめんって」

そう言って、彼は俺さまを手招きする。

やっぱり彼の元に行きたくて。
俺さまはゆっくり彼の腕の中。


「ハニーは、したかったの?」


俺さまは、遠慮がちにそう聞いた。
だって、彼がたまってたら後味悪いっていうか。


「当たり前だろ。…でも、嫌がるゼロス抱いてもなぁって思って。…俺的にはアリだけどさ、そーゆう鬼畜プレイみたいなの。でも、お前が辛いだろ?」


耳元で囁かれ、耳を舐められ、少し変な声が出てしまった。

すると彼は「その声が聞けただけで十分」と言って笑った。
恥ずかしさが込み上げてきた。


でも、『暇』という字は、確かに消えていた。






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