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□嫌わないで
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俺がゼロスに呼び出されたのは、本当に何の前触れもなく、唐突だった。
ゼロスは「二人きりになりたい」と俺を誘い、俺は訳が判らぬまま後についていった。


「ごめんな、呼び出して」
「いいって。で、どうしたの」

ゼロスの表情が陰った。
そして震える唇で、小さく告げた。


「暫く、距離をおこう」
「…は?」



突然の申し出に、俺は戸惑いを隠せなかった。
ゼロスは相変わらず俺の目を見ようともしない。

「どういう事?」
「言葉のままだよ」
「判んねぇよっ」


ゼロスの肩を掴み激しく揺らしたが、彼は気の抜けたような表情で虚空を見ていた。
ばっと手を離して、何も言わずにその場を去った。






「一一一でねぇ、…ロイド、何かあったの?」

ジーニアスがロイドに問う。

「…あ?ごめん、何?」
「ううん、何でもないよ」
「ロイド、疲れてるんじゃないのかい?」

しいなに顔を覗きこまれ、少し身じろぎしてしまう。
ゼロスが嫉妬するだろうという心遣いからの、いつもの癖だ。
しいなは構わず額に手を宛ててきた。


「熱くはないけど…。ねぇ皆、ちょっと休まないかい?」
「うん、それがいいと思う」


ゼロスは何も言わなかった。



…なんつーか、いつもの癖でゼロスの隣に座ってしまった。
彼もあからさまに嫌がったりはせず、ただ無言を持続していた。
俺の事なんて、これっぽっちも見てくれない。


けど、俺の事嫌いになった訳じゃないみたいだ。
ちゃんと、頬が染まってる。


じゃあ、何故?

何故、距離をおかないといけないんだろう。



「なぁ、ゼロ一一」
「コレットちゃ〜ん。目的地まであとどれくらい?」
「えと…、確か一一」


聞く耳すら持ってくれない。
話しかける事すらままならないんだ。


…っ


「ぅわっ!?」

コレットと話し込んでいたゼロスの腕を無言で掴み、集団の外へ引きずり出した。

「何だよ、離せよ…っ」
「…」


ゼロスが強い声音で言ったが、知らんぷり。
彼だってさっきしていたんだから、文句は言えないだろう。

そういえば近くに城壁の跡があったっけ。
あそこに行こう。
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