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□悪夢の後に
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夢の中で。

俺は。

愛しい彼に、盛大に嫌われた。














がば。

上半身だけ起き上がると、ちょうど時計が目に飛び込んできた。
時刻は昼前。

嫌な夢、見ちまったな…。


そんな事を考えながら、愛しい彼を探す。

部屋にはいなかった。



夢の中でとはいえ、あれだけハッキリ『嫌い』だと言われ、正直会いたくなかった俺は胸を撫で下ろした。


でも、ほっとしたのもつかの間で。



がちゃり。

ドアノブが捻られた音。


ひょこっと顔だけ覗かせたのは、やっぱりアイツで。


「あ、ハニー起きてたの?おはよ」

笑顔で部屋に足を踏み入れる。
夢を思い出してしまい、ちくりと胸が痛んだ。


なかなか返事をしない俺を不思議に思ったのか、ゼロスはベッドの近くまでやってきた。

「どうしたの、ハニー?」
「ん、いや…」


ふいっと顔を背ける。

視界の隅に、悲しそうな顔をするゼロスが映った。


「言えない事?俺さま何か悪い事…」


した?と彼が言う前に、俺は彼の腕を引っ張り胸の中に収めた。

「ど、どうしたの…っ??」
「馬鹿」
「ひどっ!!いきなりそれはないでしょーよ」


抱き合っている割に、会話が空気を読んでいない。
堪らず笑ってしまった。



「ハニー、教えてよ」
「ん?何を?」

突然の言葉。
ゆっくり俺の胸から顔を上げ、ゼロスは真剣に見つめてきた。


「さっき、どうしたの?」
「えっと…」
「言えない?俺じゃ駄目?」
「あ〜っ判った、判ったから」

それは反則だろってくらい上目づかい。

とうとう俺は降参して、彼に全て打ち明けた。


「ロイドくん可愛い〜」



予想外の彼の言葉。
呆気に取られて笑顔のゼロスを見た。

「俺さま、当〜分ロイドくんが大好きだから安心しろって」
「“当分”じゃ駄目」

俺はもう一度抱きしめる。
彼も静かに腕を回す。


「“永遠に”がいい」

腕の中で、ゼロスは幸せそうに笑った。



「当然」




→あとがき
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