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□18.出逢い ろく
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電話が鳴った。
出ようと手に取り、ディスプレイに表示された番号を見て、携帯を机に置いた。


出ては、いけない。

それが、彼女の為だから…。



暫くして携帯を見ると、伝言が残っていた。

恐る恐る耳にあてる。


『留守番電話サービスセンターです。不在着信が一件あります…』


携帯から流れる無機質な声。
無意識に、再生ボタンを押してしまった。



『ロイド…?忙しいのにごめんね。ゼロスです、…ふふ、なんだか変な感じ。あのね、伝えたい事があるんだぁ。日曜日、会えない?返事、待ってます』


柔らかな、何も変わらない彼女の声だった。
すぐにスケジュール帳に目を通す。



「…ああ、くそ…っ」


午前中ずっと、プレゼンが入ってる。
午後からは何もないが、きっと大量の書類を渡されるのだろう。



俺はオフィスを離れ、外に出た。
急いで電話をかける。



「もしもし、ゼロス?」
『あ、ロイドだぁ。久しぶり』
「あの、日曜日なんだけど…。その、抜けられなくて…ごめん」
『私こそ、ごめんなさい。急だったから、びっくりしたよね…?』


少し淋しそうな、彼女の声。
久しぶりの、彼女の声。

ああ、俺って…。



「よ、夜っ」
『…え?』
「8時からなら、大丈夫かもっ!!」


勢いで言ってしまった。
もう…、どうして俺って…。


『ほんと?やったぁっ!じゃあ、フランス料理の店、予約しとくね?場所はメールで送るから、迷子になっちゃやだよ?』
「あぁ、ゼロスじゃないから大丈夫」
『むぅ…。私、迷子になった事ないもん…っ』


電話越しでも彼女の膨れっ面が目に浮かぶ。
本当に、表情豊かだよな、こいつ…。


その後、一言二言話してから電話を切った。





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