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□14.出逢い に
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携帯を持つ手が震えていた。
ガラにもなく緊張気味の俺。
もう片方の手には、昨日貰った薄ピンクのハートのメモ用紙。

ドッキリでは…ないよな…?


有名人に電話をかける、なんて…。

あああ緊張しまくりなんだけど…っ


ピッ



…え…?


ああああああっ!!!!!!

つ、通話ボタン押しちまったああああ!!!!!!!



ど、どーするよ俺…。


『もしもし』
「あ、あのっ」
『あ、昨日の…?』
「は、はいっ!!」


受話器の向こうでくすくすと笑う声が聞こえた。

『楽にして下さい。タメ口で構いませんし』
「で、でも、貴女は芸能人で、俺は一般人で…」
『私も貴方も同じ人間です。違います?』
「そ、そうですけど…。…なら、貴女も敬語はやめて下さい。あの、それと…、…できれば“貴方”ではなく、名前で呼んで…下さい」
『あら、積極的ね』


ふふ、と笑われて、改めて自分が要求した事の大胆さを知ってしまう。

あああ、やばいやばいっ
俺絶対嫌われたよ…っ


「い、いやあの、そーゆう意味じゃなくて…っ!!あの、“貴方”ってよそよそしいっていうか…、あ、いや、親密になりたい訳ではないんだけどっ!!!!」
『ロイドさんって、面白いひと』


笑いを含んだ彼女の声を聞いて、一気に脱力する。
俺、顔真っ赤だ…。

思ってみれば、商店街の人込みの中で、俺は何故か彼女が目に飛び込んできたんだ。
じっと見つめてたら彼女もこちらを向いた気がして、慌てて目をそらした。

でもやっぱり気になってもう一度彼女を見ると、彼女は男達に絡まれていた。
あっと思った瞬間、
彼女と、目が合った。


とても綺麗なアイスブルーだった。



『…ロイドさん?』
「あ、…ごめん、何?」
『いつなら暇ですか?』
「あ、えっと。今週の日曜日…とか」
『あ、私も大丈夫です。では、時間と場所は折り入って連絡しますので。あ、今からテレビとか見れます?つけてみて下さい』


プツンと途切れた電話。
俺は会社の休憩所のテレビの電源をいれた。

何かのバラエティ番組。
そこには、彼女の姿があった。


「おいおい…まじで芸能人じゃん…」

楽しそうに手を振る彼女は、俺にとって高嶺の花以外の何者でもなかった。





→あとがき
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