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□11.波瀾 そのに
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雨。

窓を勢いよく叩く大粒を見て、ため息をついてしまう。
ロイドくんは、昨日の騒ぎなど忘れてソファで新聞を読んでる。


「ロイド、行かないの?」
「行かないっつーかさ、この状態じゃ何もできねぇじゃん」


新聞から目を離したロイドが、ちらりと窓の外を見る。

確かに、こんな大雨に外に出ようとは思わない。


…でも。


「私、確認してくる」
「無駄だと思うけどなぁ」
「いいの」


傘を掴んで玄関を出ると、それはもう記録的な大雨だった。
傘をさしているのに、10秒も経たずにずぶ濡れになってしまう。



公園に着くと、目を見張ってしまった。

…いる。
それも、傘も何もささずに。



「大丈夫っ!?」
「ゼロ姉?」
「寒いでしょう?こんなに冷たくなって…」


私は傘を捨てて抱きしめた。
小さな身体が少し震えているのが伝わってきた。
いつからいたのかは知らないが、相当前からいたのだろう。


「おれの、勝ち」
「え?」
「ゼロ姉だけ来たって事は、おれの不戦勝だろ?」


私は何も答えずに彼を抱き上げた。
傘はもうどこかへ行ってしまっていたので、走って家に帰る。



「お帰……げっ」

玄関で待っていてくれたロイドが、私と男の子を交互に見て嫌な顔をした。
私は気にせず隣を通り、お風呂を沸かしてバスタオルで身体を拭いてあげた。


「優しいね、ゼロ姉」
「え?」
「ううん、何でもない」

お湯が入ったのを確認して、私は彼をお風呂に入れた。
服を洗濯機に入れ、私も一緒にお邪魔させてもらう。


「綺麗…」
「何が?」
「ゼロ姉の身体」
「え!?あ、ありがと…」

何だか急に恥ずかしくなり視線をずらすと、抱き着かれた。


「おれ、ほんとにゼロ姉が好きだから。その気持ちなら、あの男に負けないから」

彼の言う“あの男”は、多分ロイドの事。
で、張本人は風呂場を覗いている。


もう、何考えてんだか…。

「あのね、その気持ちは嬉しいんだけど…」


私は彼の頭を撫でた。

「貴方には、私なんかよりもっといいひとがいると思うの」
「そんな事ないっ」
「ありがとう。でもね、私にはロイドが一番であったように、貴方にも、きっと相応しい女性がいるわ」


そこまで言うと、彼は黙った。

ごめんなさい、突き放すような真似をして。
でも、私には判るの。
貴方には、きっと素敵なお嫁さんができるわ。

だって、こんなにも真っ直ぐな瞳をしているんですもの。



「もう、上がろうか」

私がわざと大きな声でそういうと、向こうでばたばたと足音が聞こえた。
よし、ロイドくんはリビングに行った。


彼の身体を拭いてあげて、カイトの服を着せた。
私も服を着替えて二人でリビングへ。


「お、おう、上がったのか」
「うん」


不自然だよロイド…。
新聞逆だし。


「覗きは、犯罪よ?」


耳打ちしてあげると、ロイドが新聞を落とした。




→あとがき
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