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□07.運動会そのに
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わーわーと歓声が響く。
秋とはいえまだまだ日光が照り付ける猛暑の中、カイトはピストルの音と共に駆け出した。

「行っけぇカイト〜っ」
「…ロイド、恥ずかしいからやめてよ」


保護者席から身を乗り出して応援する俺の腕を、ゼロスが軽く引っ張った。

ちぇ、少しくらいいーじゃん。


「やった!カイト一位だっ!!」

二位の子と少し差をつけてゴールテープを切ったカイトは、俺達のいるテントに向けてピースした。
俺もピースをし返した。


「あ、ほら、次クーちゃんだよ」

パンッと乾いた音。
クルミはたたたっと走り始めた。

ちょうど俺達が応援するテントの前のトラックにきた時。


ずしゃあぁぁ。

盛大な音と砂埃。
クルミがこけたのだ。


「っう、…ひっく…おかーさん…っ」
「クーちゃん大丈夫!?」
「待て、ゼロス」

走ってクルミの所に向かおうとしたゼロスを、俺は制した。


「クルミ、立って」
「ふぇ、おとーさん…」
「ほら、立つんだよ。ゴールは目の前だぜ?」
「クー、いたいの。いたいの、嫌ぁ」


泣きじゃくるクルミ。
ゼロスはそわそわとクルミと俺を交互に見ていた。

「ほら、走って。クルミは強い子だから、出来るな?」
「っ…うん」


涙を拭って立ち上がったクルミは、よたよたと走り出す。
隣で固唾をのんでいたゼロスがほっと胸を撫で下ろした。




すぐに昼食の時間がきた。

先生の手によって綺麗に消毒されたクルミが、ゼロスに手を引かれて戻ってくる。


「クルミ、偉いな」
「えへへ。おとーさんが応援してくれたからだよ」


くしゃっと撫でると、クルミは抱き着いてきた。

暫くして、カイトも戻ってくる。


「お前凄ぇなぁ。一位だろ?」
「あ、当たり前だろっ」

カイトが俺の隣に座るから、俺はカイトを抱き寄せて二人の頭を撫でてやる。
お前ら、最高だ。


「お昼、早く食べないと間に合わないよ。ほら、次のはロイドも出るんだから」
「…はい?」
「親子競技。貴方の名前で登録したの」



き、聞いてねーぞ…。

どーして早く言わないかなーもー。

「オレの足引っ張るなよロイド」
「お前こそ」


互いに戦友のような笑みを浮かべ、紙コップで乾杯しあう。

休んでよかったよ、ほんと。





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