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□05.父として
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「なぁなぁロイド」
「どしたぁ?肩たたきでもしてくれんのか?」


テーブルで新聞を読んでいた俺を、カイトがかくんと揺らした。
そちらに目を向けると、小さな体操着に身を包んだ我が子。

「日曜日、運動会があるんだ」
「へぇ。頑張れよ」
「…あ、あの、さ」


俯き気味に服を握られ、何事かと身体ごとカイトの方へ向ける。

なんか、こーゆうの初めてかも…。
こいつ、こんなに可愛かったっけ?


「来てよ、運動会」



…。

そっか。
そういう事か。

俺、毎年仕事と重なってて、行ってあげた事ないからな…。
で、最後の運動会を控えた息子は必死になって俺を呼んでると。


「…あ〜」


やべぇ。
仕事入ってら。

「えっと…、」
「仕事、あんのか?」
「…はい…」
「ロイドのばかぁっ」

「カイト。おとーさんは…っ」
「いーよ、ゼロス」


何か言いかけたゼロスを制し、俺は涙を零し始めたカイトを抱き上げた。

「今週の日曜日だっけ?」
「…うん」
「よし、とーさん頑張ってみっから。泣くなよ、男だろ?」
「…絶対だよ、絶対来てよっ」
「あぁ」


そうこうしている内に送迎バスが到着し、カイトとクルミは家を出た。




「無理な約束しちゃって…」
「無理じゃない。…やってやるさ」
「貴方らしいけどね」
「だろ?男同士の約束だかんな。守らないと大事なモノ切らなきゃいけねーんだぜ?」


へらっと笑うと、ゼロスが少し顔を赤くして。

「食事中なんだけど」

と言った。


「悪ぃな」
「いえいえ、慣れました」
「…じゃ、そろそろ行くかぁ。父さ…社長を説得しなきゃなんねーしさ」

ゼロスは箸を置いて立ち上がり、俺の胸に鞄を押しあてた。

「無理は、しないで」
「…俺の息子がなくなってもいいと?」
「ち、違うよ…っそうじゃなくて…」


俺は玄関まで来てくれたゼロスにキスをする。

「じょーだん。絶対成功させるからさ」
「…ん。いってらっしゃい」


抱き着かれ、不覚にも顔が赤くなってしまった。

「いってきます」





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