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□01.暖かく、優しく
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綺麗な空。
あまりにも綺麗すぎるから。

…そうだ。


あの丘に行こうよ。



「待ってよロイド〜」
「こらカイト。“お父さん”って呼べって言っただろ」

カイトがロイドくんの手を握る。
会話は何故か親子らしくないけど、仲が悪いわけではない。

「ママ。クーも、にぃの所行く」
「クーちゃん一人で大丈夫?」


クルミは頷き、繋いでいた手を離してロイドくん達の所まで行った。

ぬくもりがあった右手を見つめて、あぁ幸せだなぁと思う。

「ゼロス〜っ」


向こうでカイトを肩車したロイドくんが手を振っていた。







「お昼にしますか?」
「お、用意してあんのか」
「うん。少し多めに作っちゃって…」


持ってきたバスケットの中から重箱を取り出す。
蓋を開けると、我ながら自信作の料理達が肩を並べていた。

「うわぁ〜っ。おかーさん上手だねぇ」
「流石かーさんっ」
「そ、そうかなぁ」


改めて褒められると、なんだかくすぐったい。
朝早く起きて作った甲斐があるよね。

「食べよーぜ」
「あ、うん。どーぞ」


それが合図になり、3人は我先にとおにぎりに手を伸ばす。
そんなに焦らなくてもいいのに…。

「おかーさん、クーお肉食べたいよ」
「うん、ちょっと待ってね」
「あ、クルミばっかりズルイ。かーさんオレも食べさせてよ」
「よしカイト、とーさんがやってやろうか?」
「ロイドはいい」
「…俺の立場って…」


呟くロイドくんにかけてあげれる言葉が見つからず、苦笑しながらクルミの口に肉を運ぶ。
クルミの隣でカイトが口を開けて待っている。

「カイトは自分でできるでしょ」
「えぇ〜っ」
「おかーさん、かっこいいカイトが見たいなぁ」


ほら。
カイトはいい子だから、拗ねながらも自分の皿に肉を移して食べ始める。


「カイト」

両手を広げて催促すると、カイトは胸の中に埋まった。

「よくできました」
「かっこよかったでしょ?」
「うん。とってもかっこよかった」
「クーも、クーも、」
「おいで」


二人に抱き着かれていると、隣にロイドくんがきた。

「お前、すげーな」
「え?」
「俺、まだ子供に好かれてねーから」
「ロイド、それは違うよ」


いつの間にか寝てしまった二人を起こさないように芝生に下ろし、持ってきた毛布をかけてやる。


「カイトもクルミも、ちゃんと貴方を愛してる」
「…そっか。さんきゅー」
「親に疑われたら、子供は何を信じればいいの?ロイドくんはきっと、考えすぎ」
「そーだな。ごめん、変な事言って」


抱きしめられる。
とっても温かい、愛する人の腕の中。
素直に身体を預けて、自分からも彼の背中に腕を回す。

「あ〜、幸せ」
「うん」
「ゼロス。俺、お前が大好き」
「えへへ、改めて言われると恥ずかしいなぁ」
「…そーだな。俺も、改めて言うと恥ずかしいかも」


見上げた空には、蒼い空間に溶け込むようにふわふわの雲が一つ、浮かんでいた。



また、こようね。





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