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□人形劇
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「…ゼロス」


無機質な部屋。

壁に吊すように両手を大の字に鎖で繋がれたゼロスが、ゆっくりと顔を上げた。


「……」
「ゼロス、僕呼んでるんだけど」
「…何ですか」


何かな、その反抗的な目。
ぶち壊してあげたくなる。

僕は彼の輪郭を撫でた。


「つっあぁ…っ!!!?」

綺麗な悲鳴があがる。
僕が頬に爪を立てたからだ。

そのまま引っ掻くと、彼の柔らかい頬から鮮やかな血が滴りはじめる。

指についた血を舐めると鉄の味が口に広がり、途端にとてつもない支配感が押し寄せてくる。


「ねぇ、ゼロス。君は僕のモノでしょう?」
「…」

彼は答えない。


別にいいよ。
愛情なんかいらない。
玩具に、感情なんかいらない。

ただ、主人の為に踊ればいい。



「…殺せよ」
「?」
「俺を殺せ」
「何言ってるの、ゼロス」


殺さないよ。

やっと手に入れた最高の玩具を、遊ばないまま壊す子供がいる?
いないでしょ?



「ゼロスは僕のモノ。人形は主人に口だししては駄目。そうでしょ」
「は、人形?ふざけた事言ってんじゃねーっつの」


ほんと、可愛い。
いいよ、人形を手なずけるのも主人の仕事だもんね。

僕が腹を殴ると彼は苦しそうに呻き、何度か咳込んだ。


彼の美しい髪の毛を乱暴に掴み、無理矢理こちらを向かせる。



「誰にも渡さない。勿論、殺さない」
「…っ」
「その目、いいね。ゾクゾクするよ」
「…気持ち悪い事言ってんじゃねぇ」



アイスブルーの瞳は、あくまで殺気を漂わせている。
そんなに僕の事が嫌いかい?


…でも。



「…ぁ、や…めろ…っ」

服の下に手を入れると、じゃら、と鎖が揺れた。


「へぇ。随分とロイドに飼い馴らされてるんだね」


むかつく。

君は僕のなのに。


すっと手を離し、今度はズボンに手を入れ、直に掴むと彼の身体がしなった。

「っ…ふぁ、…っひ…ん」

先端を緩く扱くだけで先走るゼロス。
本当に、馴らされてるね。


するりとズボンを下ろし口にくわえる。
ゼロスの目が見開かれた。

「…めろ…ぁ、ふ…、やめ…」


どうして拒むの。
こんなに嬉しそうに零しているのに。

がちゃがちゃとゼロスが暴れだすが、流石の彼も素手で鉄を破壊できるわけがない。
体力の浪費だという事に気付かないのだろうか。


「うあぁあぁぁ」



僕の口の中に欲望を吐き出したゼロスは、覇気を殆ど吸い取られた虚ろな目を尚も僕に向けてくる。

あくまで歯向かう気、か。



「ねぇゼロス。とってもいいお話があるんだけど」
「…」
「僕を毎日喜ばせる事ができたら、その手枷、外してあげる」
「…このままでいい」


…ほんと、お前って奴は。



「いいの?僕、いつでもロイドを殺せるよ?」
「っやめろ!!!」

金属が擦れる鈍い音。


「あいつには手を出すなっ」
「うん。こちらに答えてくれるなら、命の保証はするよ」
「…てめぇ…っ」
「ユグドラシル様、でしょう?口の悪い人形だね」



腹部に蹴りを入れる。
鈍い音がしたけど、手加減はしてるから骨折や内臓破裂はしていないと思う。


「…けほっ…、っ」
「いい子だから、ね?」


神子は、一人の身の安全の保証と引き換えに僕に生涯を捧げた。
これ程いい気持ちになれるなんて、という優越感が襲う。
同時に、“ロイド”という交換条件がないと僕に屈してくれないのか、という劣等感に苛まれる。



別にいいけどね。


欲しいのは、“愛”じゃないから。





→あとがき
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