シマウマだって恋をする
番外編




名前の読み方を聞かれることは多い。
普通“みどり”なんて読み方をするなんて思わないだろう。
当然メールの相手も同じような質問を返してきたわけだけど、後になって本名を教えたのは不味かったんじゃないかと後悔した。
だってもしも俺がこんなサイトを使ったなんてことが友達にバレでもしたら…。
まぁ、その時はその時だろう。楽観的な思考は自分でも気に入っている。
こんな性格をしているから、物事を深く考えるのは苦手だし、悩むことも少ない。

「あれ、これなんて読むんだ。」

碧の文字の読み方を書いて送ったメールの返事には、相手の名前が添えられていた。
“旭斗”それが彼の名前のようだ。
俺もたまに名前の読み方を聞かれるんだ、読める?―メールの最後はそんな言葉で結ばれていた。




正直、自分はあまりメールを打つのは得意ではない。
暇つぶしなら電話で十分だし、約束を取り付けるのは直接声を聞く方が良い。
しかしアサトとのメールは意外にも長く続いていた。

「なんか最近妙に携帯弄ってんな。彼女でもできたか。」

そのきっかけを作った張本人―自覚はないだろうし責めるつもりもないが―こそ、鬱陶しいだなんだといいつつ、携帯を見る頻度は増えている。

「別にー。てか惇の方が携帯、見てると思うけど。」

「最近、返事を返すほうが後々楽なことに気が付いたんだ。」

彼に付きまとうストーカー。そのメールの頻度は半端ではないらしい。
現在進行形で俺達二人が何を話しているのか聞き耳をひっそり立てているのは丸わかりだ。
隣の席にちらりと視線をやりつつ、溜息をつく親友がそれほど嫌がってはいないことも理解する。

「そんなにいいもんかねぇー」

「何が」

「男同士って」

アサトとメールをし始めて一月、最初は彼らの趣向についての興味が湧いていたのは事実だった。
でもやり取りするメールが増える度に、ただ単に名前しかしらない友人が一人増えたとしか思えなかった。
学校のこと、家族のこと、そして、親友のこと。
無論アサトが食い付いたのも親友のことで、上手く行き始めた関係はとても珍しいことなんだよ。と少し羨望の入った言葉が返ってきた。
そして、俺がメールを送ったのも、それを相談したかったのだと告げても、アサトは快く話しを聞いてくれた。
惇とユメちゃんが心配なこと、応援したいこと、彼らに待ち受けるであろう困難について、アサトは的確にアドバイスをくれた。
たった一つ学年が上なだけなのに、よっぽどアサトの方が大人なように思えた。

―これから体育。俺バスケ苦手なんだよね。―

あらかた相談も終われば絶えると思っていたやり取りも、こんな些細な文章で今も続いている。
ふと、俺はアサトのことについて何も知らないことに気が付いた。
そして今度は、彼の悩みも聞いてやりたいと思ったのだ。

*
西川碧(にしかわみどり)久保旭斗(くぼあさと)
皆様の意見で主人公達の名前が決まりました!
提案下さった方ありがとうございました!


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HN・レス不要等教えてくださるとありがたいです。●●


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