仕事
□シマウマだって恋をする
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Side時谷 惇
「西川、お前彼女いたよな。」
「え、何今更。当分前に別れたんだけど。」
「そうだったか。」
俺は今少し悩んでいることがある。
それは結構重大、というかこれからの俺の人生に関わる大問題なんだけど、気軽に相談できるほどのものではない。
「お前ってMだよな。」
「だから何いきなり!」
まぁ西川には言ってもいいだろう。
クラスでも一番仲のいいこいつをひっ捕まえて、短い昼休み中に話を終える為に屋上まで連れてきた。
西川は小学校からのツレだから、隠し事なんてのは皆無に等しい。
もちろん互いの女性遍歴も知っているわけで、もっぱら年上ばかりと付き合っているこいつへの素直な感想がさっきの言葉なわけだ。
「叩かれて嬉しいとかあんの?」
「いやだからさ、俺がMっての前提で話すのやめてくんない?!」
「違うのかよ。」
「違うよ!!」
不貞腐れてるけどそれは図星をつかれたから…なんて都合のいい解釈をしてみる。
黙々と弁当を口に運んではみるが、中々の気まずさだ。
「それ、日向井が作ったやつ?」
「そう。」
「…なんかあった?」
「…………」
一応何か話があることには気付いたらしい。
二つ目のパンの袋を開けるのを止めて、西川は俺に向き直った。
「俺ってさ、Sじゃん。」
「いやまぁ、どちらかというと、そうなんじゃね?」
性格的にどちらかと言えば、というのは俺も知ってる。
でも、今日こうしてこいつを連れて来てまで、話したかったことはそういうことではない。
「あいつ見てると、まじ泣かせたくなんだよなー。」
「…なにそれこわい。」
「つーかあいつに優しくするとか無理だし。」
「惚れてんねー。なに、ツンデレとか言うやつ?」
「うぜぇ。」
というか今一惚れているなんていう実感はあまりない。
いや、嫌いではないんだけど、でも今まで好きになった時には感じていた、守りたいだとか、可愛いくてたまらないだとか、そういうのには当てはまらない。
散々悩んだ結果がコレなわけだ。