仕事
□シマウマだって恋をする
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「あのぉー。」
「なんだよキモい声出すな。」
あ、アッキーにキモいって言われたっ!
じゃなくって!
「い、一緒に帰れて嬉しいなぁって!思って!!」
「あっそ。」
今日は多分山羊座は運勢一位だと思うんだ!
だってアッキーと一緒に帰ってるんだよ?!
二人でホームで電車を待ってるこの感じ!!
これってすっごい、すっごおおおい貴重なんだからっ!!
「アッキー、なんか良いことあった?」
「なんでだよ。」
うっ。に、睨まれても今日はめげないぞっ!せっかく話せるチャンスなんだし、聞きたいことは聞きたいんだもん!
「だって、そのっ、なんだか、や、優しいんだもん。」
「…………」
あれ、何この空気っ!も、もしやちょっと照れてるとか?!きゅんときてるとかっ!?
「あ、アッキー?」
なに見つめあっちゃってんの?!も、もしやこれは恋の予感?!ラブ☆レボリューション!?
「キメぇ。」
「がーーーん!」
うわっ!思わず擬音まで再現しちゃったじゃんかっ!
アッキーなんだか変!変なとこもいいけどなんだか変!あ、変なとこも含めて好きなんだけど!アッキーならもう全部大好きなんだけどっ!
「…これやる。」
「ほえ?」
俺が最大級のショックを受けているさなか、アッキーはポッケに突っ込んだ手をおもむろに差し出した。
おっきい手のひらにのっかていたのは苺の絵が描かれてるキャンディーだった。
「昼飯のお礼。」
「ほほほ、ほんと!?ありがとっ!」
ぬわわわー!!!
アッキーからのプ、プレゼントだなんてっ!これは一大事ですぞっ!
ぽい、と投げられたそれをもうヘッドスライディングする勢いで受け取った。
「お礼だなんて、そんな。わざわざ買ってくれたなんて…」
「西川がくれた。」
もう少しで涙がポロリのところでなんだか嫌な名前を聞いた気がしたけど、まぁそこはあえてスル―で。
「また明日も作ってくるからねっ。お、お礼はちゅーでも、ぎゅってしてくれるのでもいいよっ!」
「………………」
はぁい。もうこの視線には慣れましたぁー。
というよりこうやって睨んでるアッキーもカッコいいからむしろもっとお願いします!
「じゃあ、してやるよ。明日の分。」
「ほええ?」
ふっと視界が無くなったかと思ったら、なななな、なんと!
俺、アッキーにぎゅってされてるんですけどーー!!!!!
「ああああああ、アッキー!!??」
な、まさか、これって、え、その、お礼に俺をやるよ的な?!
むしろ、お前を貰う的なアレっ!?
いやー!!心臓が壊れるー!!アッキーのぬくもりがー!!
大きな腕が俺の体を包み込んで、痛いぐらいぎゅって!
ぎゅううって!!!
って、あれ?!
「アッキー、あの、ぎゅってされるの嬉しいんだけど、あれ?ちょっと、あれ?苦しいなー?」
この胸が締め付けられる感じ…じゃなくって、あれ?アッキーちょっと力入れすぎじゃない?締めすぎじゃない?あれ?
「あれれ?アッキーちょっと苦しいぞ?いや、胸がどきどきで苦しいとかじゃなくって、いや、それもあるんだけど。その、あれれ?…ちょ、アッキー!ギブギブ!!いろいろ嬉しいけど!ちょっとアッキー?!聞いてる?!し、締まって…る…」
「じゃあこれ明日の分な。」
いろんな意味で意識を飛ばしそうになりかけて、アッキーのセクシーボイスが俺の耳元にいっ!
ぽいっとほうられたと思ったら目の前にはアッキーの後ろ姿がやってきた電車のドアの向こうに…あれ?
「あれ?!今日一緒に帰るんじゃなかったのぉー!!??」
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