★ぬ〜べ〜小説★

□ぬ美樹
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放課後。5年3組の教室にはまだ電気が灯っていた。何やら美樹がひとりで作業をしているようだ。


「あぁ〜ん、もう難しいわ。何なのよコレぇ!」

美樹は床にしゃがみ込んで、机の足にワイヤーを結び付けていた。教室の一番前の席2つを結びつけるつもりだ。


「ふふんっ。これで明日ぬ〜べ〜が転ぶ姿を拝めるんだから。いたずらっ子美樹ちゃんを舐めないでいただきたいわっ♪」


ようやくワイヤーを結び終えた。ふと時計を見ると、既に6時をまわっていた・

「マズイわ。気付かれないように、早く帰らなきゃね。」

美樹は教室の電気を消すと、そぉっとした足取りで廊下に出た。窓の外はすっかり暗くなっている。
廊下の電気もすべて消され、足元が見えづらい。


「何も出なきゃいいけど・・・さっさと帰んなきゃ。」


階段をそそくさと駆け降り、昇降口を出ようとした瞬間、美樹はぎょっとした。


「やっばーい!明日の算数の宿題、教室に置き忘れてきちゃった。あれやんないと、またぬ〜べ〜からげんこつだわ。」


一瞬そのまま帰ってしまおうか悩んだ美樹であったが、げんこつは嫌なので仕方なく教室の方向へと足を向けた。


「3階までこんなに遠かったっけ・・・。」

美樹はぜーはー言いながら階段を上っていった。


「はあ。やっとついた。」

教室の電気をつけると、すぐさま自分の机に向かい、中からプリントを取り出す。

「あった。これこれ。・・・ふんふん。この問題なら、ちょちょいのちょいで30分で済むわね。」


とひとりごとをつぶやいていた美樹は、そのとき教室に迫っていた足音にまったく気付かなかった。



「美樹!!」

そう呼ばれた瞬間、ビクッとした美樹は恐る恐る顔を上げた。


「ぬ、ぬ〜べ〜・・・」

ごまかし笑いを浮かべながら美樹は弁明する。

「あ、あのね、一回家には帰ったんだけど、宿題教室に忘れたの思い出しちゃってー!ご、ごめんなさい、今すぐ帰るから・・」

いたずらで机に結び付けたワイヤーを気付かれないように美樹がそそくさと帰ろうとしたその瞬間、


「きゃっ!」

美樹は自分で仕掛けたワイヤーに足を引っ掛けてしまった。

「美樹!」

鵺野は倒れかけた美樹の体を抱き抱えるようにして、一緒に倒れこんでしまった。

「いてて・・・。どうしたんだ美樹、何もないところで急に転んで。大丈夫か?」
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