!長編

あんま見んなよ
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扉が開くとチリンチリンと音がなるこの喫茶店

『いらっしゃいませー、何名様ですか?』

ほんの何十分の間に一体何回この台詞を聞いただろうか
店員は一人一人に笑顔を振りまきながら接客をしている

久々に坂口と会える
広樹はそのチリンチリンという音にやたら敏感になっていた

「広樹、貧乏ゆすり止めろよ」

「うるさいな、関係ないだろ」

そう言って広樹は珈琲を口につけた
他人から見て分かるほど
広樹は緊張していた


そんな様子を見て橘は
「はあ…」
と大袈裟に溜め息をついた

「何だよその溜め息…」
「別に」
明らかにふてくされたような顔で橘も珈琲を一口飲んだ

そのとき
再びチリンチリンという音が店内に鳴り響いた

「いらっしゃいませー、何名様ですか?」

「えっと、待ち合わせなんですけど」


その声がかすかに聞こえた瞬間、広樹の鼓動が速くなった
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