!長編
□好きだと言って
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「着いた着いた、ほら入れよ」
この人がそう言って濡れた傘をたたむ。
入り口に少し足を踏み入れると、自動ドアが開いた。
それは学校からも見えていた、結構大きなマンションだった。
「お金持ち…なんですね」
「んなこと、ねーだろ」
この人はそう言って笑ったけど、僕は羨ましくて仕方なかった。ずっと前から、ここのマンションに入ってみたかった
僕は、黙って後についていくと203号室の前に着いた。
この人が鍵を開けて、電気をつけると、やっぱり想像通り広い部屋が目の前に広がった
「…お、お邪魔します」
「ういー」
靴を脱いで恐縮して部屋に入る
部屋の中は綺麗に片付いていて少し煙草のニオイがした
「ちょっとシャワー入ってくるから」
僕がぼっーと部屋を眺めているとこの人はそう言ってバスルームに入っていた
雨で全身濡れていたもんな…って呑気に思ったけど半分は僕のせいだと気付いて急に申し訳なくって正座して待った
部屋からは、シャワーが流れる音と、強い雨の音だけがした