!長編

好きだと言って
5ページ/11ページ


「うーん、困ったな」

その人は傘を見て首を傾げる

何故だか中々帰ろうとしない

「…帰らないんですか」

僕は不思議に思って、その人に問いかけた

「…なんつーか。いや、俺だけ帰ったら悪いじゃん」


「え?」
今度は僕が首を傾げる

「せっかく二人で雨宿りしてたんだから、帰る時も一緒がいいじゃん」

サラリと笑顔で、この人はそう言った

「いや、いつ止むか分からないですし…」

「でもなあー」

「…いや、いいです。大丈夫です。気にしないで下さい…」

僕は精一杯断った

正直、嬉しくなくはなかったけどそれは本当に悪いと思った


「いや、やっぱり待つよ」

「…本当に良いですって」

僕は何度も拒否をした
そしたら、ようやく

「…よし、分かった」
とこの人は頷いた

「はい、それでは」

ようやく下がってくれたか。
僕は複雑ながらも、その人に早く帰ってもらうよう促した

「では、気をつけ…」
「一緒に帰るか」

「は?」
僕は耳を疑った

「男同士だけど、まあ気にすんな」

そう言ってこの人は折りたたみ傘を開く

「ちょっと待っ…」

「俺の家でよければ、雨が止むまで待ってろ」

その人は強引に僕の肩を抱き寄せ、傘に入れた

呆然としている内に話はどんどん進んでいた


「凄い強引ですね…」

「しゃーないだろ、高校生のお前をほっとくわけに行かねーっつの」


そう言ってこの人は、さりげなく傘の半分を僕に入れた

その人は雨でまたぐっしょりと濡れてしまった



それが僕らの出会い





降りしきる雨の中に


3に続く
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ