!長編
□可愛いから
9ページ/10ページ
【可愛いから】
〜高杉編〜
「はーい、転校生を紹介します」
担任になるであろうちょっと小太りな教師に言われてクラスに入りお辞儀をしたら、一気に教室がざわついた
見渡すかぎりの男子が僕の顔をじろじろと見ている
理由は…多分…
(僕が女みたいな顔をしているから?)
「…あの、」
しばらく沈黙が続き、少し気まずくなった僕は思わず声が出てしまった
それに気付いたのか担任は
「みんな仲良くしろよ、高杉はこう見えても男の子なんだからな」
と、僕の肩を優しく叩きながら言ってくれたので
「あ、はい。バリバリ男です!」
と、思わず拳を握りしめながら言ってしまった
それでもみんなは僕の答えに首を傾げる
好きでこんな顔に生まれたわけじゃないから、いつまでたっても
「僕を見るそんな目」
に慣れない
可愛いといわれるのはもう慣れたけど、もっと普通の顔に生まれたかった
***
今まで、僕は女の子とばかり一緒にいた
弁当を食べるのも昼休みも全て女子の中に男の僕がいた。
好きでそうなるわけじゃなく、自然にそうなっていたんだ。
それは、男としての好意をもたれていたわけじゃなくて、僕が完全に女の子として扱われていたから
そして高1の春
父さんの転勤が決まった
何てタイミングだと思ったが僕は父さんについていき、学校を離れることにした
そこで僕は男子校を選んだ
男だらけの学校に入学すれば僕は女扱いされずに済む、そう思っていたし、
なにより純粋に男友達が欲しかった
『変わりたい』
僕はそう胸に誓って、
男子校に入学したのだ