!長編

可愛いから
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高杉の手を引っ張りながら無言で歩く俺。

どこを案内しようか、とか
体育館倉庫はいやらしいよな
とか
何か色々考えながら、
連れだしてみたけど…




気まずい

どうしてか気まずい

何故俺は、一体どうして高杉を連れ出したんだろう
とか今になって思った

高杉が困ってたから?
可哀相だったから?
高杉が危ないと思ったから?


今思えば、とても恥ずかしい事をした気がする

いくら高杉が女の子みたいだからって、いくら可愛いからって高杉は男に間違いはない

俺が助ける必要あった?


未だに高杉とは手を繋いだままで、高杉の手を引っ張りなが歩いている状態で…
高杉は俺の手をギュッと握っていて…

あれから高杉は声を発さない
だから俺も話さない
もしかして迷惑だったかもなんて思うがあの時の笑顔はとても迷惑そうには思えなかった

むしろ自分では中々良いことをしたと思っている

…違うのか?

俺はだんだんワケが分からなくなって思わず高杉の手を強く握りしめてしまった

そしたら後ろで小さく
「…いててっ」
って声が聞こえたので、ビックリして俺は高杉の手を離した

「悪い…」
そこでようやく高杉と目が合う俺
高杉も俺に目を合わせると、
「ごめん、こっちこそ」
と言って小さく首を横に振った
見れば見るほど、男には見えない。


*********


「…あの、」
声をかけられてハッとする
気付いたら高杉のことを見つめていた。

「ごめん、何?」

「いや、あの、加藤くん、何で…僕を助けてくれたんですか」

「え?」
思いもよらぬ言葉に俺は固まった。
何で気付いてるんだ?
あんなにも自然にふるまったのに…



と、思っていたんだけどアレはバレバレだったのかと気づいた俺はがっくりと肩を落とす

「…加藤くん、」

「何もねーよ。頼まれたの俺だったから」
何だか急に恥ずかしくなった俺は、高杉に嘘を吐いた

正直に言えばいいのに、何で言わなかったんだろ。

「…もう時間ないから戻るか」
俺は何事も無かったかのように話を変えて、教室に戻ろうとした


そしたら高杉が
「でも僕は加藤くんに案内して欲しくて…行きたかったけど…中々行けなくて…だから嬉しかった」

って言った。
照れながら、下を向きながら、高杉はそう言いやがった。
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