☆妄想の釜:奈落の碗
□突撃!ルロイくん!!
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<アルノルト室前>
ア「こんばんは。僕はアルノルト・グラーフ・フォン・ルロイ。『アル』って呼んでくれると嬉しいな。ちなみに本名はもっと長いんだけど、今は割愛しておくよ。多分覚えられないだろうからね。僕が今いるのはルロイ家の本邸じゃなく別荘の城だ。そしてこんな夜中に何をするのかと言うと……もう聡明な君なら解ってると思うから説明は省くよ?堅苦しい手順がいるほど短い付き合いでもないしね」
三「………………」
ア「僕の隣で顔をしかめてるのは、相棒の三笠尉之。なんと日本で探偵をしてる元刑事だ。だから何かと君を苛立たせる発言をすることもあるかもしれないけれど、僕の顔に免じて許して欲しいな。どうしても無視出来ないなら『ああ、この人は可哀相な人なんだな』とでも思ってくれてもいいよ」
三「随分な言い方だな……おい、アルノルト」
ア「ん?何だい?」
三「何故お前がここにいるんだ?確か今回の司会は俺とディートリヒの予定だったはずだが……」
ア「ああ、交代してもらったんだ。だってこんな楽しそうなの、主である僕を差し置いてディーターにさせるなんて、ここの管理人は相当脳味噌が腐ってるらしいね」
三「そーゆー危険な発言はやめておけ。ついでに忠告しておくが、全っ然楽しかないからな」
ア「君は何度もやってるからそんな事言えるんだよ。日織とか和との掛け合いを見てて、正直羨ましかったもの」
三「そんなにやりたかったなら、ディートリヒじゃなくて、俺と交代すればよかったんだ。俺は喜んで代わるぞ」
ア「ディーターと一緒にしても五月蝿いだけだよ。会う人会う人全員に、僕の自慢をするに決まってるんだから。司会にすらならないよ」
三「それはそうだな……だが、よくディートリヒが交代したな。どうやって説得したんだ?」
ア「説得なんてしてないよ」
三「命令か?伯爵サマの伝家の宝刀だな」
ア「まさか。ただちょっと一服盛っただけだよ」
三「何やらかしてんだお前はっ!?」
ア「いやあ、あんなに効くとは思わなかったなあ、あはははは」
三「晴れやかに笑うなーー!!」
ア「大丈夫。体内に残留しないタイプのを使ったからね!」
三「一体何を飲ませたんだお前は!?」
ア「数時間眠る薬だよ」
三「毒じゃないんだな……おどかすな!!」
ア「運が悪かったら永眠するけど」
三「毒じゃないかーー!!」
ア「人聞きが悪いな。睡眠薬だよ」
三「永眠するのは確実に毒だろうが!?」
ア「……尉之。薬というものは時として、毒にもなるんだよ?」
三「そーゆー台詞は、時と場合を選んでから言え……!」
ア「ふう……尉之の石頭にも困ったものだね」
三「心底困ったように言うな!!どことなくムカつくんだよ!!」
ア「そろそろ最初の部屋に行かない?尉之をからかうのにも飽きちゃったよ」
三「人で遊ぶなーー!!お前最近タチ悪いぞ!!」