☆妄想の釜:奈落の碗

□その七
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<玄関ロビー>


和「あ、猫がいる」

日「ありゃ、本当だ。どっから迷いこんで来たんだか」

デ「伯爵が引っかかれては一大事です。追い出します」

ドタドタドタ……バッターン!!!!

三「こんなデカい城で、猫の一匹も置けんとは了見が狭いぞアルノルト!!!!」

和「わあ!」

日「すげえ地獄耳だなあ」

ア「追い出そうとしたのはディーターだよ」

デ「その通りです。アルノルト様は寒風吹きすさぶ屋外にいたいけな猫を放り出すような冷たいお方ではございません」

和「あ、一応猫には悪いと思ってるんだ」

日「和さん、あれはただ自分をおとしめて、アルを良く見せたいだけですぜ」

三「どっちでも構わん!!楓は理由なしにいきなり引っかくような悪い子じゃないぞ!?」

和「もう名前付けてんの!!??」

三「戒名までバッチリだ!!」

和「戒名!!??」

日「縁起が良いんだか悪いんだか」

ア「ていうか、ついさっき会ったばかりの猫を、良い子だと思えって言われてもね」

デ「そうですね。三笠様、あの猫とは先程出会ったばかりだというのに、性悪ではないとする根拠はあるのですか?」

三「猫に悪い子はおらん!」

和「うわあ、即答した」

日「和さん、無表情で驚かないで下さい。既にツッコミに疲れましたかい?」

三「日織、お前は猫が好きなんだよな?家でも飼ってるしなうらやましいな畜生」

和「あの、心の声を一緒に言わないで下さい……」

三「お前も猫は好きだろう?好きって言え」

和「まあ好きですが」

日「和さん、『日織が好き』って言って下さい」

和「猫は本当に好きだから言えるけど、お前の場合は言わない」

三「俺だけじゃあいつらを説得出来ん。お前らも猫の良さを言え」

和「えええー?」

ア「確かに、尉之が言っても説得力に欠けるものね」

デ「ですね。日織様と一柳様ならば、冷静な意見が聞けそうですし」

三「俺が猫に関しては冷静さに欠けるというような誤解を招く発言は止めろ」

和「誤解どころか正しい見解だと思います」

日「冷静さに欠けるどころかテンパってますし」

三「いいからにゃんこの良さを言え!お前らが言ってくれないなら俺が言うぞ!!??」

和「『にゃんこ』!!??」

ア「和、日織、言ってくれないかな。尉之に語らせるとうざいから」

和「『うざい』!!??伯爵が『うざい』!!??」

デ「伯爵がそんな俗っぽい単語をお吐きになる訳がありません。幻聴です」

和「えええ!!??」

日「とうとう現実から目を逸らし始めましたね。それはさておき、猫がいたら色々便利ですぜ」

三「そうだ。目の保養になる」

ア「目の保養程度じゃね」

デ「アルノルト様の目の保養になるのは、伯爵自身のお姿くらいです」

和「あの、それただのナルシストです」


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