☆妄想の釜:奈落の碗
□その六
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日「三笠さん。俺を助手にして下さい」
三「は?助手?意味が解らん」
日「『助手:特定の職務に就く団体もしくは人物の作業を円滑に進めさせる為の補助的動作を行う人間あるいはその立場』」
三「いやそうじゃなくてだな。……いきなり何だ?お前が探偵助手を目指してる事は知っているが」
日「俺にも好みはありますからね。やっぱ下に就くからにはそれなりに四六時中一緒にいて楽しいお方っていうか探偵じゃないと、折角助手になっても数日経たない内に『私立探偵殺害事件〜有能助手のぶらり温泉旅行日誌・ポロりはないよ☆〜』が起きかねません」
三「その場合、被害者と犯人が確定してないか?てかタイトル後半が訳わからんが。……俺の助手になりたいのは何でだ」
日「俺も大人なので、俺好みのドジッ子ビビりで泣き虫の、眼鏡で可愛いツッコミ体質の探偵が現れるのを待つよりも、ここは一つ妥協しようかと思いまして」
三「『妥協してくれ』と頼んだ覚えはないがな。むしろ永遠に妥協するな」
日「だから仕方なしにあんたの助手になってあげます。有り難く思って土下座しなせえ」
三「土下座してやるから助手にはならないでくれ。それと人の話はちゃんと聞け。頼む」
日「とりあえず。今俺を助手にすると、チケット一年分差し上げます」
三「チケット?……『危ない時助けてあげますチケット』……」
日「更に初回特典はこちら」
三「……『悪人に捕まって、活躍する場を与えてあげますチケット』……」
日「そして何と!一年後に契約を更新した暁には、3メートルの高さの枝も切れる、グラスファイバー製高枝切り鋏もついて来ますぜ!!??」
三「………………」
日「どうですかい?俺を助手にするとお得だという事が解りましたかい?」
三「お前が馬鹿だという事だけは解ったがな」
日「あっはっは。こんな時にツンデレーションを発揮しなくとも良いですぜ?」
三「いや、本気なんだが」
日「解ってます解ってます。表面では俺に辛く当たりつつも、心の中では『俺みたいな凶悪な面構えのドリーマー&マイウェイ探偵の助手になってくれてありがとう』とか思ってるんですよね?」
三「お前、表面では俺に丁寧な物腰で接していながら、心の中では俺を『凶悪な面構えのドリーマー&マイウェイ探偵』だと思ってたんだな?」
日「ややっ!何故それをっっ!!??」
三「とりあえず、一発殴らせろ……!!」
助手になれずに、完。