☆妄想の釜:奈落の碗
□彼の名は暴走
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<三笠室>
三「俺が疑ってるのは3人いるんだが……」
和「3人ですか」
三「誰だと思う?」
和「…………。執事さんと、ジョージさんと……日織、ですか?」
三「ああ、そう――」
バターン!!!!
日「和さああぁぁあん!!」
和「うっわああぁ!!??」
三「扉を開ける前にノックするように教わらなかったのかお前は!?」
日「な、和さぁん……」
和「な、何だよ……」
三「泣きながらにじり寄るな!はっきり言って気持ち悪いぞ!!」
日「容疑者に俺を入れるなんて……俺は悲しいですよぉ……」
三「聞いてないな」
和「や、あの、本気で疑ってるわけじゃなくて、可能性として」
日「こんな招き猫が友達の探偵にかかずらったばっかりに、俺の純真無垢な和さんが……」
三「なにげに失礼な事を言いやがった」
和「しかも『俺の』って何。『俺の』って」
日「ああお母さん、純粋な和さんはどこに行ったんでしょうねえ……」
和「は?」
日「夏碓氷から霧積へ行くみちで、渓谷へ落とした、あの和さんですよ」
和「それ、麦藁帽子でしょ」※知ってる人は知ってる有名な詩。
三「しかも渓谷に落としたんなら、確実に死んでるぞ」
日「……三笠さん」
三「なんだ。……なるべくこっちを向いて喋るな」
日「あんたのせいですよ。毎晩毎晩和さんを部屋に連れ込んで調教してくれたおかげで、和さんはこんなに疑ぐり深い人間になっちまった……」
和「その言い方やめてくんない!?なんかいやらしいんだけど!?」
三「それに今のお前を見たら、誰でも疑うと思うが」
和「ていうか、どこで聞き耳立ててたの」
三「一柳くんの発言から、かなり来るのが速かったな」
日「ああ、この部屋の隣の空間に潜んでたんでさぁ」
和「ちょ……どこまで僕を監視してんのさ!?」
三「日毎にひしひしとストーキング度が悪化してやがる」
日「……和さん」
和「な、ななな何?」
三「こら!人を盾にするな!!」
和「だって怖いんだもん!」
三「俺だって怖いわ!!なんつーか、初めてナマコを発見した原始人的な恐怖で!!」
日「俺の何がいけないんですかい?俺は目付きは悪くないし強いし優しいし」
三「比較対象を誰にしてるのか言え!」
日「犯人にあっさり捕まって、殺されかけるほどマヌケじゃないし」
三「今のお前の状態もマヌケ以外の何物でもないがな!!」
和「ってか、だからこそ怖いんだけど、日織の場合……」
三「その意見に激しく同意だ、一柳くん!」
日「えっ!?そうなんですかい!?」
和「う、うん……悪いけど」
日「じゃあ和さんへの接し方を180度変えればいいんですかい!?」
和「ええと……そう……なんですか?」
三「俺に聞くな!」
和「…………。じゃあ、そうしてくれるかな?」
日「解りました!!それじゃ、まずはこの首輪をお付けしましょう」
三「どっちにしろ変態だろーが!?」
和「誰か助けてぇーー!!」
暴走したまま、完。