☆妄想の釜:奈落の碗
□PART4
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<高遠家>
三「こんにちは」
和「こんにちは、三笠さん」
日「こんにちは」
三「ん?その酒は何だ?一柳くんは幼稚園児並に下戸だから……また先客か?」
和「僕が下戸なのは間違いないんですが、余計な例えを付け加えるのはやめて下さい」
日「よく解りましたね、流石探偵さんだ」
和「お前も流すなっ!」
三「誰が来てるんだ?」
和「…………。来てるのは暗石さんですよ」
三「暗石?」
日「居間にいらっしゃいますから、挨拶してみちゃどうですかい?」
三「そうだな」
★ ★ ★
和「あ。さっき僕、『暗石さん』って言っちゃった」
日「そういやそうですね。……ん?」
ドタドタドタ……
三「ひ、ひひひひっ!」
和「ぎゃあああっ!!三笠さんが発狂したぁっ!!??」
日「和さん!俺の後ろに!」
三「――誰が発狂だっ!?日織、色紙を出せ!!!!」
日「……はい?」
和「色紙?」
三「縁側に陣野警部がいる!サインを貰わねば!!」
和「……ああ、暗石さん?」
日「磯前の旦那ですか」
三「気安く旦那と呼ぶなっ!!お前は北速水か!!!!違うだろう!!そんな事はこの俺が許さん!!!!」
和「三笠さん、言ってる事が目茶苦茶です!」
日「生憎色紙はねぇんですが」
和「お前も冷静に返すなよ!」
三「くそ、こうなったら服にサインして貰うしか……!!しかし水性ペンだと、洗濯した時に流れてしまう……!!」
和「三笠さん、落ち着いてっ!!??」
<居間>
三「わざわざこんなあばら家においで下さいまして、誠にありがとうございます(正座)」
磯「あ、ああ……。ってか、ここ着流しの家だぞ?」
日「……悪かったですね、あばら家で……」
和「日織、青筋青筋」
三「さ、粗茶ですが」
磯「お、おう。ありがとよ」
日「うちの茶葉なんですがね」
和「日織、拳から力抜いて」
三「どうぞ、つまらない猫ですが」
磯「いや、食えねーぞ?」
日「そのつまらないのを、いっつも追っかけてんのは、どなたでしょうね?」
和「日織、目が怖いよ……」
三「これを手土産代わりにお持ち帰り下さい。煮るなり焼くなりお好きに」
磯「……坊主を持ち帰ってもなあ……」
和「わーーん!!持ち帰らないで下さいぃっっ!!??」
日「三笠さん、あのですね……」
三「つきましては、こちらにサインをお願い申し上げます」
磯「おう」
サラサラ……
三「や、『尉之くんへ』と添えて欲しいのですが……!(ぶるぶる)」
磯「…………。ま、いいけどな……」
和「ん?これ……日織!」
日「え?……あああああっ!!??じーさんの初版本がああっっ!!??」
磯「何騒いでんだ?」
三「お気になさらず。ただ今静かにさせます!」
磯「いや、そういう意味じゃなくてだな」
日「うわぁぁぁん!!!!じーさぁぁぁん!!!!」
和「ひ、日織……」
磯「…………。なんか空気が重いから、帰る」
三「しばしお待ちを。今火打ち石を用意致します」
和「それ、陣野警部いない時代ですよ三笠さん!」
日「和さん、塩持って来て下さい……!」
和「日織も落ち着いてよーーーー!!!!」
磯「おい、俺にまでまく気かよ?」
三「この無礼者!!そこになおれ!!!!」
和「だからそれ、時代が違いますっっ!!!!」
日「二度と来るなーーーーっっ!!!!」
三「殿中でござる殿中でござる!!!!」
和「だーかーらー、時代が――わっ!ぷっ!!何で僕までぇっ!!??」
磯「おい着流し、殿中で塩まくなよ。掃除が大変だぞ」
和「あなたは少しは慌てて下さいっ!!??」
シリーズ存続の危機で、完。