☆妄想の釜:奈落の碗
□PART1
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<高遠家>
成「日織ん家ってひっろいなー。一人で住んでんのか?」
日「ええ、あと猫がいるくらいでさぁ」
和「可愛いよー」
成「俺、犬派なんだよな。猫が嫌いっつーワケじゃねぇけどよ」
和「えー?僕は断然猫だけどな」
三「一柳くんの言う通りだ」
日「おや三笠さん、また猫を見に来たんですかい?」
成「誰コイツ」
和「ついこの間知り合った、探偵さんだよ」
三「誰だ?この目付きの悪い男は」
日「成瀬さんです。ほら、例の館の事件で……」
三「ああ、執事に成り切ろうと無駄な努力をしてみたはいいが、結局執事のコスプレをしたツッコミ体質の不良で終わった高校生か」
成「テメこの、初対面の人間に何ぬかしてんだ!?つーか日織、お前どーゆー風に説明してたんだよ!?」
和「な、成瀬くん、落ち着いてよ」
日「どーゆーって言われても……」
成「それに目付きが悪いのはお互い様だろ!」
三「確かに聞いた通りの奴だな。四半世紀近く前の、俺の台詞にまでツッコミを忘れず入れるとは」
和「よ、よんはんせいき?」
日「25年前って事です。三笠さん流の皮肉ですぜ」
和「あ、そうなんだ」
三「いちいちくだらない事を聞くんじゃない!」
和「す、すみませんっ!」
成「和をいじめんなよオッサン!!」
三「……オッサン?一応言っておくが、お前が呼び捨てにした男もお前より年上だぞ」
成「和はいーんだよ!!」
和「どーゆー意味!?」
日「詳しく説明されたいんですかい?」
和「……いや、いい……」
三「まあいい。今日来たのは、猫観察のためじゃない。ここに捜してる猫がいるかもしれんと思ってな」
和「どっちにしろ猫が目的なんですね……」
成「なんなんだコイツ?探偵っつっても、和と比べて違いすぎねぇか?」
日「和さんを基準にするのはどうかと……」
和「ひ、日織……」
三「日織。それは一柳くんに失礼だぞ。そもそも一柳くんを名探偵だと言い始めたのはお前だろ」
日「珍しいですね。三笠さんが誰かを庇うなんて」
三「彼には世話になったからな。だが日織の言い分も理解出来る」
成「そもそも和って名探偵ってガラじゃねーんだよなー」
和「うう……」
三「ヘタレだし」
成「ビビりだし」
日「童顔だし」
和「顔は関係ないでしょっ!?」
三「すぐ泣くし」
成「ひ弱だし」
日「背も低いし」
和「背も関係ないから!!皆酷いよ!!結託して集中攻撃しなくたっていいじゃないかーー!!」
三「ほらすぐ泣いた」
和「うわーーーーん!!」
成「ホントに泣くなーーーーっっ!!」
日「和さん泣かないで下さいな。今言ったことはほんの冗談ですよ」
和「ひ、日織……」
成「またお前、そんな甘甘な……」
三「見事な飴と鞭の使い方だな。見習いたいくらいだ」
成「見習ったとしても、あんたに使いこなせるとは思えねー」
三「…………」
成「な、なんだよ」
三「成る程な」
成「何がだよ?」
三「初対面で既視感を感じたのは、絹也に似てるからか」
和「あ、そういえば」
日「似てまさぁね」
成「勝手に納得してんなよ!絹也って誰だよ」
和「…………」
日「…………」
成「何で黙るんだ!?」
三「いの一番に出て来る説明が、決して褒め言葉じゃないからに決まってるだろう」
成「なんだと!?」
和「うーん、メイド好きって、言われて嬉しいかな……?」
日「自爆するのはどうですかい?」
成「…………」
三「俺が説明するまでもなかったな。お前達、丸聞こえだぞ」
和「あっ」
日「こいつは失礼」
成「……なあそいつ、不思議ビバレーツ好きか?」
三「この間、珍妙な味のカップ麺に挑戦してたが」
成「……なんか仲良くなれそうだな……」
和「や、やめて!お願いだから!!」
日「厄介事に巻き込まれる確率が高くなっちまう」
三「いいじゃないか。名探偵の宿命だ」
和「三笠さーーん!?」
平和な空気で、完。