過去拍手『兄弟衝突』

□愛と、プラス1
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[拍手小話18]


突然ですが。


わたしたち、


結婚しました!





(椿の場合)


「んーとねー、こっちが俺とキミの寝室でー」

「はい、間取り的にもそれがいいですよね」


椿の仕事が休みの今日は、二人で新居選びに来ている。

都内で新築ではないが、築年数の少ない、綺麗なマンションだ。


「ここがー!未来の俺たちのベビーの部屋ーっ★」

「…椿さんたら、ベビーだなんて…」

「照れるなよー?いーだろー?早く欲しーんだし★」


未来の家族の姿を思い浮かべ、照れる絵麻の肩に手をまわし、次の部屋に向かう。


一般的な家族構成で考えると、部屋数が多いマンションだ。

実家のような子沢山を想定しているのか、はたまた実家マンションでも二部屋を占拠していた彼の趣味の倉庫用なのか――


(きっと後者なんだろうな)


それもまた仕方がないと、絵麻は思う。


「んで、この部屋がー、」


その先は既に予想がついていると、のほほんと構えていた絵麻だったが、椿の口から飛び出したのは、その予想を大幅に裏切るものだった――。



「梓の部屋ーっ★」




「………はい?」

「梓の部屋だよー♪あ、棗の部屋はないからねー?」


なくて当たり前だろう。

何故、弟である梓の部屋が新婚夫婦の新居にあるのか。

おかしくはないか?
いや、おかしい。


「あの…椿さん…?何故、梓さんのお部屋が…?」

「えー?一緒に暮らすからに決まってるじゃーん!梓と離れて暮らすとかあり得ないしー?今度の休みは、梓も連れて、カーテンとか買いに行こーっ♪」


(…ダメだ)


彼に話したところでどうにもならないのは、結婚を決める程の短くはない付き合いで重々理解している。


(梓さんにお願いしよう)


絵麻は携帯を取り出した――。



「…と、いう訳なんです」

『やれやれ、椿にも困ったね…分かった、僕から話してみるよ』

「お願いします、梓さん」



――かくして、梓は椿と話し合うに至った訳だが…


「ごめんね絵麻。やっぱりさ、椿がどうしても一緒がいいって言うし、僕も椿が近くにいた方が何かと都合がいいし…」



(……えぇ、なんとなく予感はしてましたよ…)


かくして、椿と絵麻の新居には、弟・梓専用の部屋が出来たという――。





(梓の場合)



「梓さん…わたし、前からおかしいなって思ってたんですけど…」

「奇遇だね。僕もおかしいと思ってたんだよ、絵麻」


結婚して実家マンションから出た二人が暮らす新居にて。


どんどん増えていくモノに、どんどん侵食されていくスペース。


「あの…?」

「ねぇ…」


声かける先には、嬉々として、メタルシェルフにフィギュアを飾る――


「椿さん?」「椿?」



「なーにー?梓ー、絵麻ー?」



兄・椿の姿があった――。



「何?じゃないよ。何でこの家に椿のモノがこんなにあるのかな?」

「それはー、俺が持ち込んでるからー♪」

「何で、持ち込むんですか?」

「なんで?ここが、梓と絵麻と俺のウチだからー★」


はぁ、と二人揃ってため息をつく。


将来の為に、と購入したマンションなので、現時点では部屋は確かに余裕がある。


だからと言って、新婚家庭に入り込むのはどうなのだろうか…。


「…まさか、君一人の時にも上がり込んだりはしてないよね?」

「それはないですけど…」

「だいじょぶ、梓ー。俺、それくらいの常識はあるよー♪」

「いや、もうそれ以前に色々非常識だから」


このままでは埒が明かない。


「…椿」

「なに、梓?」

「ここに居座るのは、椿には色々と都合が悪いこともあると思うよ」

「例えばー?」


せっせとフィギュアを飾りながら、椿は尋ねる。


「例えば、僕と絵麻の情事の声を聞いてしまうとか」

「あっ梓さんっ!?」


その梓の言葉に恥ずかしがる絵麻だったが、



「あー、俺、それオカズにするからだいじょーぶ★」




「…平気なの、椿…?」

「うん。だって絵麻が梓を選んだのはやっぱりなーって言うか、梓ならって思うし。俺へーき!」

「わたし、平気じゃないんですけど…」


絵麻のささやかな呟きは椿には届かない。


「俺、ちゃーんと部屋代も食費も入れるよー?あ!ソッチもオカズにするから、それ用の“食費”も出した方がいーい?」



それ用の“食費”とはいったい…、とは口には出来ない絵麻。


「…ごめん。ちょっと時間かかるかも…」

「…心得てます」



長い付き合いでも、そこそこの付き合いでも、結構理解が出来る人となりである、椿。


だが、



理解が出来ることと、許容出来ることとは違うのだと、絵麻は改めて思うのだった――。



『愛と、プラス1』〜終わり〜


一卵性は結局どっちかにどっちかが必ず付いてくる気がしてなりません。

だから、一卵性二人揃いでゲットか、または二人揃いで振るか…。

なので、原作初期から、

『この二人がメインだろうに、ヒロインとはくっつかないよね』


と思ってました。


タイトルは古いアニメの主題歌をちょっと変えて。


拍手有難うございましたm(__)m


2014/03/12
藤堂市松 拝



〜拍手移動後の後書き〜

久々のサイト整理です。

改めて読み返すと、その場の勢いで結構酷い…(苦笑)。


ちなみに「そっちの食費」とは椿がオカズにする行為に必要なアイテムの購入費用です。

うすうす、とか書いてあるアレですだ(笑)。


そして、やっぱり一卵性は別々には出来ない感。

妹とのED逃したら嫁さん来そうにないですよね…この二人。


お読み頂き、有難うございましたm(__)m


2014/04/30
藤堂市松 拝

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