過去拍手『兄弟衝突』

□転迷開悟で蓮華を咲かせ
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[拍手小話17]


夜も更けた頃――


要の部屋のチャイムがけたたましく鳴り響いた。


「はいはい!誰…っと…わた?どうした、こんな夜中に?」


ドアを開けると、そこには泣きべそ顔の弥が両手を握り締めて佇んでいた。


「わた、寝ないと駄目だろう?明日、起きられなくなるよ?」


こんな時は大体雅兄のところに行くのにな、と不思議に思いながら、弥に声をかける。


「かなかな…助けて…!」

「え?」

「お姉ちゃんをっ…助けてっ!!」

涙目で切実に訴えてくる弥。


「っ!? わた、どうした!? 妹ちゃんに何があった!?」


膝を折り、弥に目線の高さを合わせて、その肩に手を置く。


「い、今ね、眠れなかったからね、まーくんのお部屋に行ったの…っ」

「うん?妹ちゃんのところじゃなく、雅兄の部屋…?」


妹の話ではなかったのか、と要は焦りながらも首を傾げる。


「そしたらねっ…まーくんがね、裸でお姉ちゃんに乗っかっててねっ!ずっとずっと上から押しつぶそうとしてたの!お姉ちゃん、すっごく苦しそうに叫んでた!なんでまーくんはお姉ちゃんをいじめてるの!? ねぇ、かなかな!お姉ちゃんを助けて!お姉ちゃんが死んじゃうっ!」



「………なに、してるのかな、あの人は…」



(情事に励むなら部屋の鍵くらいしっかり閉めておこうよ、雅兄…)


要が心の内で文句を述べたことについては、きっと誰も何も言えないだろう。


「かなかなぁ〜!!」

「…あ、あぁ〜わた、雅兄は妹ちゃんを苛めてる訳じゃないから、大丈夫だよ」

「で、でもっ!!」


(…正直、ちょっとその場には割り込みたくはないし…あ、そうだ)


雅臣に何か言えるとすれば、一人しかいないだろう。


「わた!京兄のところに行きな!京兄ならきっと妹ちゃんを助けてくれるから!」


(京兄に任せちゃえばいいよね?)


ナイス責任転嫁、と思った要だが、その提案に弥は眉をしかめる。

「…もう、行ったもん…」


「…は?」


と、弥が指差すマンション通路の先を見ると――



ドアを開け、弥の身長くらいの高さで視線を止め、完全に固まっている右京の姿があった――。


(あ…京兄のキャパ越えたか)


「かなかな…どうしたらいいの…?」


「えーと……どうしようか…?」



弥に全てを教えるか。

それとも、何かで誤魔化すか。


(…難しい…説法よりも遥かに難しいよ…)


あぁお釈迦様!


どうかこの生臭坊主に、


今すぐ悟りを開かせたまえ!!



『転迷開悟で蓮華を咲かせ』〜終わり〜


すごーく短い、まさに小話でした。


…ただ、弥にまーくんの情事の描写を喋らせたかっただけでした(苦笑)。

非常にタイトル負けな内容でした。

ちなみに、
『転迷開悟で蓮華を咲かせ』
というタイトルですが、

『転迷開悟』は漢字の通り、「迷いを転じて悟りを開く」という意味です(確か、元は仏教用語)。

そして『蓮華を咲かせ』ですが、『蓮の花』はその様子から、悟りを開くと言う意味の描写として使われるのです。


つまり、このタイトルは

『このピンチを何とかして!知恵を下さい!ピンチを切り抜ける知恵を!!』

と言う意味になります(笑)。


拍手有難うございましたm(__)m


2014/03/10
藤堂市松 拝


〜拍手移動後の後書き〜

長らく放置の拍手小話。
忙しさにかまけてなかなか手付かずでしたので、旧作をとりあえず過去拍手に移しています。

これはタイトル負け作品でしたね。
いや、タイトルはかなり秀逸だと思ってますよ、本当に。

お釈迦様に申し訳ないくらいに(苦笑)。

私、全く信仰心のない無宗教なんですが、仏教用語は結構好きです。

つまるとこ漢字好きなんですよね、日本語も大好き。


うちの作品のタイトル見ると、それが顕著かと。

確実に日本語が多いんですよね。

英語はめちゃくちゃ苦手です(苦笑)。


お読み頂き、有難うございましたm(__)m


2014/04/16
藤堂市松 拝

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