過去拍手『兄弟衝突』

□夢の中から飛び出して
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[拍手小話16]


「うええぇぇぇぇ〜〜〜〜んっ!!まーーーくーーーんっっ!!」


朝から弥が、泣きながらもの凄い勢いでリビングに駆け込んできた。


「どっ、どうしたのっ、弥っ!?」

慌てる雅臣に、何事かと様子を伺う他のキョーダイたち。


「まーくん…僕、きっと死んじゃうの…」
「死んじゃうって…どこか痛いのかい!?」


ふるふると首を振る。


「朝、起きたらね…」


そう言って、雅臣の前で寝間着のズボンの腰回りをグイッと寛げる。


「変なの…っ、出てたの〜っ!!」


「…………」




「あ、雅兄が固まった」
「ここで固まっちゃダメっしょー★まさにー、おーい、まさにー!」

端で様子を見ていた梓と椿が雅臣に呼び掛けるがフリーズは溶けない。


「で、ででで出たって、まさか、弥…っ!?」

察した侑介がどもりがちに尋ねる。

「ゆーくん知ってるの!?これ、なーにっ!?」
「おうぁっ!?バカ!んなモン見せんなっ!?」
「ねぇ、僕、ビョーキなの!?死んじゃうのっ!?」


ズボンを緩めたまま、弥が侑介にすり寄って行く。


「お、落ち着け弥…とりあえず病気、じゃない、ぞ?」
「ビョーキじゃないの!?ならなにっ!?何なのすばるんっ!?」
「うわぁっ!?見せるな!見せにくるな!!」


動けない雅臣をよそに、そっち系の知識に疑問点が残る三人が騒いでいる。


「これさ、どう収拾つければいいのかな」
「弥に教えてやればいーんじゃないのー?」
「…誰が?雅兄固まってるけど」
「棗、呼ぶ?」
「…来るまでこれは流石に…」


こういう時に頼りになるのは、ある意味としての要か、真っ当な意味での右京なのだが、生憎二人は不在だ。

…ちなみに右京は早く出掛けたのだが、要は帰ってきていない。


「なーにー?朝からうっさいんだけどー?」

そんなバタバタしたリビングに、恐らくは一番来てはいけない人物が来てしまった。


「あっ!ふーたんっ!ふーたんなら分かるっ!?すばるんはビョーキじゃないって言うんだけど、この出てきたのなにっ!?」


風斗の前に駆け寄って来て、今までと同様にズボンの中を見せる。

「……そんなモノ、僕に見せないでくれるっ…!?」
「そんなものっ!?そんなものってものなのっ!?」
「そんなものでしょ!?うわ見ちゃった最悪信じらんないっ!?」
「うわあああぁぁぁぁんっ!!やっぱり僕、どっかおかしいんだあぁっ!!」


再び泣き出す弥に、流石の風斗も少し態度を軟化させる。


「…なに?チビはそれが何か知らないワケ?」
「うっグスッ…知ら、ないっ…!」
「ふーん…じゃあ教えてあげるよ」


風斗の珍しい態度に周りは少しどころではなく嫌な予感を覚える。

「ソレはねぇ」
「ちょ、ちょい待て風斗…」
「あのな風斗…」


風斗の解説を遮ろうとする侑介と昴だが、風斗の口は止まらない。


「ソレは『赤ちゃんの素』って言うの!」


「は?」
「あ?」
「え?」
「お?」


侑介、昴、梓、椿はほぼ同時にポカンと口を開けてしまう。


「『赤ちゃんの素』…?」
「そう、『赤ちゃんの素』」



「お、おい風斗…!?」
「なに?間違ってないでしょ?」
「間違ってはいないが…」
「チビに合わせて、ちょっとメルヘンチックに言ってあげたんだから、感謝してよね」


ひそひそと、侑介と昴が風斗をたしなめるが、風斗はあっけらかんとしたものだ。


「『赤ちゃんの素』…っ!じゃあっ!」


弥が何かに気付いたように、キョーダイたちの方へとバッと顔を向ける。


「僕、お父さんになれるんだねっ!!お姉ちゃんと『フーフ』になれるんだっ!!」




「……ほーら、どうする風斗…?」
「ど、どうするって」
「やっぱー、棗、呼ぶー?」


梓と椿に挟まれ、風斗がしどろもどろになるが、そんな風斗に向かって、弥は更に続ける。


「ねぇ!?この『赤ちゃんの素』はどーしたら赤ちゃんになるのっ!?『素』だから何かと混ぜるの!?なにかにいれるのっ!?」
「いっっ!?いっいれるってっ…!!?」
「おっ、落ち着け侑介っ!風斗!何とかしろッ!?」
「何とかって!?大体アンタら兄貴がしっかりしとけば良かった話なんじゃないの!?」
「責任転嫁は良くないよ、風斗」
「そーそー★」


最早収まりの効かないリビングの混乱に、意外なところから救いの手が差し伸べられた。



「弥くん…ズボンとパンツ、履き替えよう…ね?」


右手にティッシュの箱、左手にはバスタオルを抱えた琉生だった。


「るいるい!僕ね、お父さんになれるんだよ!!」


興奮しながら琉生に話しかける弥だったが…


「なれないよ…弥くん」


琉生はそれを否定した。


「え…?だって『赤ちゃんの素』だって…」
「うん、それは本当…でも、それだけじゃお父さんには…なれない」

弥をバスルームに誘導しながら、琉生は弥に諭す。


「ちゃんと…教えてあげる…『赤ちゃんの素』についても、男の子の責任も…ね?」



バスルームのドアが閉められ、残されたキョーダイは、一呼吸置いて、はぁ〜と息を吐く。


「さっすが琉生兄!頼りになる!」

琉生を慕う風斗がそう声をあげるが、他の四人は、


「…琉生兄って…意外に漢(おとこ)だな…」
「…正直、琉生兄がああくるとは思わなかった…」
「琉生って使えるオトコだったんだなー…」
「もしかして…一番頼りになったり…するのかな?」


概ね、意外性を口にする。



すると、それまでフリーズしていた雅臣が突如声を張り上げた。


「あっ梓っ!右京に連絡してっ!!」
「なに、突然。どうしたの雅兄?」


雅臣は興奮した顔で瞳を爛々と輝かせながら、こう叫んだ。



「弥が大人になったんだよ!今日はお赤飯炊いてもらわなきゃ!!」



「そっちー!?そっちなの、まさにーっ!?」


雅臣のフリーズの方向性に、ボケの椿が思わずツッコミを入れる。


「……こんの、ヘタレ医者…っ!!」



口には出さなかったが、この風斗の呟きに、その場にいたキョーダイ全員が珍しく心の中で同感の意を示していた――。



『夢の中から飛び出して』〜終わり〜

はーい、また下ネタでーす♪

性知識ネタは弥を絡めるのが、分かりやすくていいですね。
そう言えばさ、小学校って女子に対しては保健的なお話があるけど…男子のに対してはないですよね?
(今はあるの?)


これは拍手に出番がなかった、侑介・昴・琉生を出しつつ、下ネタで、と言う目的で書き始めましたが…

琉生を出すタイミングがなく、こんなマトモな使い方になってしまったのが無念です…(-_-;)

つか、侑・すばは、揃えると全く話が進まないな…( ̄0 ̄;)


拍手有難うございましたm(__)m


2014/03/09
藤堂市松 拝


〜拍手移動後の後書き〜

弥はどんな夢見て出しちゃったんでしょうね?(笑)

そこにも触れたかったんですが、ゆー・すばが揃いいると本当に話が進まないんで、その部分は省きました。

お読み頂き、有難うございましたm(__)m


2014/03/29
藤堂市松 拝

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