過去拍手『兄弟衝突』

□満たして、僕のデザイア
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[拍手小話15]

※この小話は、拍手小話10の続きにあたります。小話10は過去拍手置場にございますので、未読の方は是非そちらもご覧下さいませ。
(一応読まなくても分かるようにはなっています)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


サンライズ・レジデンス五階。

朝日奈家が所有するフロアーのリビングにて、怪しい動きをする男たちの影があった――。


「京兄、落ちた?」

「落ちた。爆睡してる」

「よし、やるよ要」

「…本当にやるの、ひーちゃん…?」


その一室で蠢く影は、三男の要と、普段はマンションにはいない四男の光だった。


リビングのローテーブルには、空になったワインのボトルとグラスが乱れた状態で置かれている。

その前のソファーには、真っ赤な顔で寝息を立てる次男の右京。

おそらく、ワインに酔い潰れたのだろう、ちょっとやそっとでは起きそうにはない。

光は右京の前に屈み込むと、


「ここまで来て引けますかっての!」


そう言って、右京のベルトに手をかけた――



「何してるの?」


「うわっ!?」
「うおっ!?」


突然かけられた声に驚き、変な叫びをあげた二人は自身の口を塞いで、お互いに「「しーっ!」」と小声で人差し指を口元に立てる。

「何してるの?光兄さん」

「…祈織か」

「驚かせないでよ、祈織」

「何してるの?光兄さん」


祈織は先程から同じ問い掛けを繰り返す。


「祈織、俺もいるんだけ」
「チッ」


要の言葉に小さく、しかしはっきりと舌打ちをした祈織は、どう見ても笑っていない瞳で口元には微笑みを浮かべ、


「…何してるの?光兄さん…?」

再び問い掛ける――。


(要、アンタたちってずっとこんななワケ?)
(そこは聞かないで欲しいけど、こんななワケ…)


そう、ひそひそ話をしていると、突然祈織はキッチンに向かい、炭酸水をグラスに注いでトレーに乗せて戻ってきた。

「じゃあ僕は部屋に戻るから」

「え?…聞かないの?何してたのか…?」

「聞いても答えないし。視界に入ったから尋ねただけで、別に光兄さんがとうとうそっちの道に進んだのだとしても、僕には関係ないから、じゃあ」

「ちょ、ちょい待った、祈織」


慌てて光が引き止める。


「別にそっちの道に走ってないからね?」

「大丈夫。僕、誰にも話さないから」

「いやいやいや、だから走ってないからね?」


いくら女装しているからと言っても、嗜好は至ってノーマルな光は冗談の通じない祈織だからこそ、半ば必死に言い訳をする。


「祈織、ひーちゃんは別に京兄をど」
「何してたか聞いてほしいの?じゃあ聞くから、話して。光兄さん?」


そして、あくまでも要は無視だ。

「いや、実はさ、きっかけはコレなんだけどね」


そう言って差し出す、フォトフレームに入れられた一枚の写真。

それは妹がこの家に来て、初めて訪れた島の別荘で皆で撮ったものだった。
風斗も来ていた時に慌てて写した為、海で遊んでいた面々は皆水着姿である。


「雅兄、要、椿、琉生、昴、侑介、弥は水着」


写真を指差しながら兄弟たちを分けていく。


「京兄、梓、アンタ、風斗は服を着てる」

「それが?」


「撮影の合間だったって言う風斗は仕方ないし、この間、とある画像で確認できたからいいの」


と、写真の風斗の上に指でバツ印をつける。


「あと梓はね、椿見れば大体想像できるし、この中にはいないけど棗は陸上やってる時に見たことあるから外す」

同様に梓にもバツをつける。


「あと問題なのは、京兄とアンタなのよ」


そして、写真の右京と祈織に○を描く。


「一体何のこと?」


「毛よ!毛!ウチのキョーダイで毛深い奴とかいないのかって話!」


そもそもは、風斗が持ってきた等身大画像プリントのシーツを見たことに始まる。


綺麗につるっつるだった風斗の半裸を見て、光はキョーダイたちの体毛が気になった。


(そう言えば、俺も薄い方だしな)

けれど、我が朝日奈家は身内から見ても完璧なるフェロモン家系。

男性フェロモンが多いと、髭や体毛が濃くなると聞いたことがあるが、その割には皆、綺麗なものだと写真を見て思う。


物書きの性だろうか。
一度気にすると、気になって堪らなくなってしまうのだ。


なかなか身内にすら裸体を見せないキョーダイのことが――。



「と、言うワケでー、ちょーっと京兄のを拝ませてもらおうかなー、なんてね」


酔わされて潰れた次兄のベルトに手をかけると言う、ある意味凶行は、その光の知識欲(『知識?知識なの、ひーちゃん…?』)の表れだった。


「そう」


光の説明にも対して興味はなさそうに、祈織は簡潔に答える。


「ところで、右京兄さんは酔い潰して確認出来たとして…僕はどうするつもりだったの?」


順序としては、右京が終われば当然残る一人の祈織がターゲットとなるはずである。


「いやぁアンタは難しいからさ、攻めあぐねてたとこ」


光がお手上げと言ったように肩を竦めて、両の掌を挙げる。


「そうなんだ」

「いっそのこと、昔は仲が良かった要に確認取ってもらお」
「誰に確認取るって?光兄さん…?」


祈織が持つ氷の入ったグラスよりも冷気を放つ横目に睨まれ、流石の光も口をつぐむ。


その時、ふと祈織の持つトレーが気になった。


(何でわざわざトレーを使う?)


その光の視線の先に気が付いたのか、祈織が冷たい瞳のまま、フッと笑う。


「僕のがどうなっているか知りたければ、彼女に聞けばいいよ」


「…え?」
「…は?」


「彼女に聞けば、分かるから」


そう言って、トレーを持ったまま移動する。

グラスの中の氷が僅かに溶けてカランと微かな音をたてる。


その音の出所は、トレーの上の二つのグラス――。


「じゃあ」


颯爽とリビングを出ていく祈織。


「……ひーちゃん」

「……なに、要」

「……京兄の、まだ、見る?」

「……もう、いっかな」

「……そうだよね」



祈織の言葉と二つのグラスの示す意味。


キョーダイの中でも悟い二人が気付かないはずもなく――



珍しく、光の知識欲が萎むと言う結果で、朝日奈兄弟フェロモン、もとい体毛論争は終結を迎えた。


――無駄に酔い潰された次兄を残して――。



『満たして、僕のデザイア』〜終わり〜


挫折…m(_ _;)m

祈織サマと京兄を下ネタ話に出そうと試みた結果…


惨敗しました…申し訳ございません。

まぁ結果、祈織サマの一人勝ちだったワケですよ。

小話10の風斗、ゴメン!
君のシーツは姉さんには活かされなかったよ(苦笑)。


そしてこの小話は…


市松がついに『風斗シーツ』を買っちゃったよ記念小話です♪(/ω\*)買っちゃった♪買っちゃった♪(笑)


お読み頂き有難うございましたm(__)m


2014/03/07
藤堂市松 拝


〜拍手移動後の後書き〜

風斗シーツは勿論パッケージ開けられずに取ってあります!

改めて読むと、光さんが色々酷い(苦笑)。


これは毛ネタありで祈織サマと右京を、と言う話は先の後書きにも書きましたが、

もひとつ、


祈織サマに要さんをとことん無視させる


と言うのも書きたいネタのひとつだったのでした。


タイトルの
『満たして、僕のデザイア』
デザイアは欲望という意味ですので、

知識欲を満たしたい光さん、と、
彼女とうんたらかんたら(苦笑)な欲を満たしたい祈織サマ

の二人にかけたものでした。

お読み頂き、有難うございましたm(__)m

2014/03/26
藤堂市松 拝

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