過去拍手『兄弟衝突』

□始まりの日
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[拍手小話13]


「そう言えば、椿さんって何で“妹萌え”になったんですか?」


「え?」
「あ?」


ここはよく立ち寄るカフェ。

今日は三つ子と一緒に映画を観に行く約束で待ち合わせをしていた。


「ごめん、椿の仕事が押してるらしいんだ。もう少し待ってくれる?」


と、いうらしいので、


椿待ちで、梓・棗と三人でお茶をしている中で、絵麻はずっと気になっていたことを尋ねた。


「うーんと」
「あーー…」


何やら歯切れの悪い二人。
揃って明後日の方向へと目線を向ける。


「何か、凄い訳が…?」

「いや、凄い訳じゃあないんだが…」

「うん、全然凄くはないんだけど…」


この二人が揃ってこんな状態になるのは珍しい。

絵麻は俄然、その訳が気になってきた。

しつこく尋ねたおかげで、ついに二人が折れる。


「…それじゃ教えるけど…椿には僕らが話したって言わないでくれる?」

「あと、他のキョーダイたち、特に下には絶対言うなよ」


絵麻はうんうん、と首を縦に振って頷く。


「あれは忘れもしない19年前のこと」

「オマエ…相変わらず椿のことだと異常に記憶力いいな…」

「棗うるさい。続けるよ」



そして、梓は語り始めた――。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「…かーいい…」


椿の口から漏れた言葉。


それは、目の前の女性の腕に抱かれた幼子に対してのもの。


「かーいいっ!かーちゃん!なにこのコ、かーいいっ!」


椿が頬を染めて幼子を見つめる。
幼子は、きょとんとした目で椿を見つめ返す。


「今日から家族になって一緒に暮らすのよ?つっくん、仲良く出来る?」

「できる!なかよくできる!ねー、梓♪棗もー★」


椿は、背後にいる梓と棗を振り返り声をかける。


「うん、かわいいね」

「うん、なかよくする」


興奮している椿に答える梓と棗だが、二人の瞳にもまた興奮の輝きが見えた。


「おれ、いもーとできてうれしい!めちゃくちゃかわいがるから!」


「あ…えっとね、つっくん」


「かーちゃん!このコ、なんてなまえ!?」


キラキラした瞳で母である美和に尋ねる椿。

美和は少々心苦しさを感じながら、真実を伝える――。


「つっくん…あっくんも、なっくんも…このコはね…」


そう呼び掛けて、腕に抱いていた幼子の脇に手を差し入れ、三つ子の前にと掲げるように差し出す。


「るーくん、よ。琉生って言うの」



「「「え?」」」


あまり重なることのない、三人の声が同時に零れる。


「るーくん…貴方たちの…“弟”よ…?」


その美和の言葉に、まるで自己紹介の様に、差し出された琉生はホワァと笑った――。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「…その時の琉生がまた、可愛くてね」

「それで椿はよりショック受けたんだけどな」

「つまり、琉生さんを妹だと思い込んだがゆえに…?」


コクンと梓が頷く。


「勿論、僕らにとっては初めての下のキョーダイだったからね、琉生のことは可愛がったよ」

「だが、椿はそれからずっと母さんに『妹を産んで』と頼み続けるようになったんだ」

「うちのキョーダイがこんなに増えたのは、その椿のおねだりが原因かもね」


ふぅと昔を思い出しながら、軽く息をつく二人。


(もしかして、わたしって、琉生さんの代わり…?)



「おーまーえーらー…!」


ふと気が付くと、いつの間にかテーブル席の後ろには、肩をいからせた椿が立っていた。


「椿、遅かったね」

「待ったぞ」


飄々と返す二人だが、椿はかなりご立腹の様子だ。


「何だよ何だよ二人とも!俺ばっか琉生に夢中だったみたいに言いやがってー!!」



「何のことかな」

「記憶にないな」


とぼける二人。


「絵麻!俺よりも二人の方が問題アリアリなんだからねー!」


と椿が早口で捲し立てた話によると――


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「るーくんはホントに男のコなの?」

「そうよ、あっくん」

「こんなにかわいいのに?」

「そうよ、なっくん」


ホワァと笑う琉生の側に近寄ると、梓と棗は左右から琉生を抱き締めた。


「かわいい」

「弟でもかわいい」

「かわいがるね、おかあさん」

「いっしょにあそぼうな、るーくん」


固まった椿の傍らで、梓と棗は琉生を構って構って構いまくっていた――。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「オマエらなんて“弟”に胸キュンしちゃってたくせにーっ!!」

「椿、僕たちは初めて出来た下のキョーダイが嬉しかっただけだよ」

「そうだ。弟を可愛がるのは兄として当たり前だろ」


揃って乾いた笑顔を貼り付ける梓と棗に、椿は「違うー!絶対違うー!」と叫び続けている。


(えーと…ようは)


その三つ子のじゃれあいを見ながら、絵麻は思う。



――つまりは、三人とも“妹萌え”要素アリなのね、と。



オープンか、そうでないかの違いなだけで。



しかし、まさかそのきっかけが琉生であったとは――



一抹の切なさを覚えた、“妹”なのでありました、とさ。



『始まりの日』〜終わり〜


何となく書きたくなった小話。

椿の妹萌えの理由がオフィシャルで設定されてたらスミマセン…(ーー;)


一応、琉生が朝日奈家に来たのが2歳の時だった、と言うのは調べました。

つまり三つ子は5歳ですね。


何でこんなに産んだのかな?と思ったところからの妄想ですが、養子の琉生で終わりにはしたくなかったんじゃないかな、とは思うんですよね、琉生のために。


拍手有難うございましたm(__)m


2014/02/27
藤堂市松 拝


〜拍手移動後の後書き〜

そういや、私は昔、兄が欲しくて欲しくてたまらなかった時期があったんですが…


今は断然弟が欲しいです!


もちろん、原因は風斗!♪(/ω\*)


とりあえず、「椿の妹萌えの理由はこうですよ〜」と言う訂正やクレームがこなくて良かったです。

お読み頂き、有難うございましたm(__)m


2014/03/12
藤堂市松 拝

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