過去拍手『兄弟衝突』

□キミに届けるシチュエーション
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[拍手小話12]


『俺は…お前を妹でなく女だと思っていた…幼い頃から、ずっとだ…』

『…好きだ…!』

『もっと…お前に触れさせろ…ここが、感じるんだろう…?』


ちゅ、ぴちゃ、と脳内に反響する水音。

まるで、本当に耳を舐められているように感じられ、ゾワゾワとする感覚が耳と腰に響いてくる。


(…なに?何なのこれ…!)


聞き慣れた兄の声が、聞き慣れない言葉遣いで、頭の中に直接、愛を囁く。



「えーーまーー!どう?どう!?」


すぐ側で、聞き慣れた兄の声が、聞き慣れた言葉遣いで問い掛けてくる。


「…椿さん…これ、何なんですか…?」


その声の主に顔だけを向けて尋ねる。
耳元から繋がるコードがある為、身体を動かす範囲は制限されるからだ。


「俺のーシチュエーションCDだよー★」


「シチュエーション…CD…?」

絵麻は、着けていたヘッドフォンを外しながら、椿に再度尋ね返す。

絵麻は今、椿の部屋で、彼が出演しているCDを聞いて――聞かされていた。

「そー!色んなシチュエーションを設定してー、聞いてる相手に語りかけるよーにするんだ♪大抵は、オンナのコに対して愛を囁くってのなんだよ★」

「…恋愛物の男性の台詞だけを抜粋して喋っているものと…」

「そーそー。そー思えばオッケー♪」


そして絵麻は、CDが入っていたパッケージを改めて手に取る。


「…で、何でこの中の椿さんは…“妹”相手に愛を囁いているんですか…?」

「何で、って、そりゃー」


椿は絵麻の手からパッケージを抜き取ると、自らの前に掲げ、そのタイトルが彼女に見えるように指し示す。


「これが兄と妹の恋愛をテーマにした作品だからだよー★」


そこには『Dirty Darling〜一番近くは譲れない〜(ちょっと俺様な兄編)』と書かれていた――。


「…色々と、問題があるテーマだと思うんですが…?」


すると椿はそのパッケージをパタパタと扇ぐように振る。


「問題ないない♪だって、別に血の繋がりがあるとか言ってないじゃん?兄と妹ってだけでさー」

「…兄と妹ってだけで、十分問題だと思うんですが…」

「えー?それだと俺とキミも問題アリになっちゃうから、無しにしといて?」

「……そ、そうですね…」


世の中には色々な嗜好があるということなのだろう。

そう言えば、目の前のこの人は自他共に認める“妹萌え”を名乗っていた、と絵麻は『千差万別』『多種多様』と言った四字熟語を思い浮かべていた。


「そう言えばこのCD、何か聞いてて不思議なんですけど」

「んー?なにがー?」

「曲を聞いてるのとは違って…声が響く場所が移動するって言うか…」


耳を舐められている場面は、本当にそんな感じがして、こそばゆかった。


「あーそれはね、」


と、ダミーヘッドマイクについての説明をする。

(※これ読んでる皆はダミヘは知ってると思うけどー、もし知らない子がいたら、ググってねー♪椿★)


「へぇ、そんなマイクがあるんですね」

「うん。中にはさー…」


椿は急に絵麻との距離を縮め、彼女を腕の中におさめる。


「ダミヘで耳元で喋られると、それだけで感じちゃうって子もいるらしいんだ…濡れちゃうくらいに」

絵麻の心臓がドキンと音を立てる。

「キミは…どう?」

「ど…どうって…」

「俺の声で…濡れちゃった?」


直接的に尋ねられた事で、絵麻は激しく羞恥心を覚えて、外していたヘッドフォンをまた着け、耳を塞ぐ。


「あれー?もしかして気に入った?もっと聞きたい?」

「ちっ、違います!つ、椿さんがっ!」

「俺がー?」

「…そんな、恥ずかしいこと…聞く、から…」


恥ずかしそうに俯く絵麻の仕草に椿の表情がでれでれと崩れる。


「…それに」

「それに?」


そっとヘッドフォンを外して、下斜めから背後の椿に横目で視線を投げる。


「すぐそこに椿さんがいるのに…直に声が聞けるのに…CDごしじゃなくて、ちゃんとわたしに言ってくれた方が嬉しいです…」


絵麻の望みに、椿の“妹萌え”メーターは振り切れ、かつ“彼女大好き”度数も最大値を振り切った。

「かーいい…たまんねー…!」


背後からギューッと抱き締める。

「きゃっ!椿さんっ!?」


「いっぱい囁いてあげる!いっぱい感じさせてあげるー!俺だって!」


彼女の耳元に唇を寄せる。

先程はヘッドフォンから聞こえた響く水音が、今度は感触を伴い直に身体に届く。


「俺だって、CDの中の触れない“妹”より…キミがいいよ」



そして、椿は絵麻に台詞ではない沢山の熱い言葉と、CDでは届けられない感覚と熱を与え続けた。


――こんなシチュエーション、他じゃ絶対味わえない――!



『キミに届けるシチュエーション』〜終わり〜


『Dirty Darling〜一番近くは譲れない〜』シリーズは、あと

(優しく穏やかな父編)と
(我が儘ツンデレな弟編)と
(ちょい悪ワイルドな伯父編)があります(笑)

…んな設定いらんわ(苦笑)。


(我が儘ツンデレな弟編)はKENNくんでお願いします(笑)


私がシチュエーションCD好きなので、声優というからには!と考えましたが、最初は梓で使うネタの予定でした。

だけどふと、鳥さん(梓)はシチュエーションCD率が高いけど、鈴さん(椿)はあまり無い気がする…と思いまして。


それならあまり無い鈴さんの方にしましょー♪と椿になりました。

拍手有難うございましたm(__)m


2014/02/26
藤堂市松 拝


〜拍手移動後の後書き〜

『Dirty Darling』ですが(まだ続けるのか無駄設定(苦笑))、


父編は田中秀幸さんにお願いしたいです。
伯父編はですね〜、関俊彦さんとか〜(*^.^*)
弟編はやっぱりKENNくん推しですが、風斗なので、ここは下野さんか鈴木裕斗くんに(←えぇ前にもチラと出ましたが好きですよ)。

んで、本編に出てる兄編なのですが…


本来、鈴さんの声って「俺様な兄」ってイメージじゃあないんですよね。
やっぱり鳥さん(梓)にしとけば良かったかなぁ。

ちなみにこの兄編が「ガチで天然エロスな兄」だと宮下栄治さんになります(笑)←嵐くんが好き。


お読み頂き、有難うございましたm(__)m


2014/03/10
藤堂市松 拝

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