過去拍手『兄弟衝突』
□トモダチは猫二匹
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[拍手小話11]
絵麻と心を通わせ、ようやく身体も触れ合わせられる時期が来た。
――と思ったのだが。
「あ、あの、棗さん…その、わたし、今…あの、アレになってしまって…」
思わず眉間に皺が寄る。
「ご、ごめんなさい…」
真っ赤な顔で謝る絵麻の頭を軽くぽんぽんと叩き、
「気にするな」
と伝える。
しかし、そう返したものの、かなりその気になっていただけに、己の昂りを抑え込むのが辛い。
あれから五日。
「……はっ…!絵麻……絵麻…うっ…くっ…!」
いまだにその期間である彼女を思い、棗は自身で慰めていた。
「くっ、あっ…ぅあっあぁっ…!」
右手に欲望が吐き出される。
はぁはぁと荒く息をつき、汚した己の手を見やる。
「……情けないな」
彼女を抱けない鬱憤を自らの手で消化させる虚しさは、過去に行った同様の行為にはなかったものだ。
はぁとため息をつく。
手のひらから零れ落ちそうな欲望の残滓に意識を戻し、慌ててその処理をと身を起こす。
「ティッシュ…しまった、用意しておくんだった」
離れた位置に置いたままにしてあったティッシュの箱を取ろうと、汚した手とは逆の腕を伸ばす。
すると、同居人である、同時に生まれた兄たちと同じ名を付けた二匹の猫が、その彼にじゃれつこうとまとわりついてきた。
「おい、つばき、あずさ…今はやめろ…やめろって…!」
何とか二匹を身体から離そうとする棗だが、今の状態ゆえに強く振り払えない。
それを構ってくれているかと思ったのか、二匹は更に棗に絡み付く。
右手の中のものを溢さないように、前屈みになり、左手を伸ばす。
――しかし、運が悪いことに、いまだ僅かに硬度を保つ彼自身が、猫たちの前へと曝されてしまい、
「ニャ」
「ニャ〜」
綺麗に研いで磨かれた、鋭い二匹の爪が伸びる――
「いっ……っっっってえぇぇぇっっっ!!!!!!」
――棗の切ない悲鳴が、彼のアパート中に響き渡った…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あの…棗さん、その…アレ、終わったんです…」
「お、おう、そうか」
「えっと…」
「あぁ…そうだな…」
絵麻の誘いとも言える言葉に、けれども棗の反応は鈍い。
「棗さん…?」
「うん、あぁ」
「…お待たせしちゃったから…イヤに、なっちゃいましたか…?」
歯切れの悪い棗に、絵麻が不安そうに見上げてくる。
「なっ、ならない!なるはずないだろう!?」
慌てて彼女の背に手を伸ばし、その身体を抱き寄せる。
(…覚悟を決めろ、俺…!)
そして、そのまま、彼女をベッドへと横たえ、その身の上に覆い被さった――。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「くっ……つっ…!」
彼女と触れ合う部分から得られる快感が電気を浴びたように身体を駆け巡る。
それと同時に、思わず声をあげてしまう引きつる痛みに、顔が歪められる。
「な、つめさん…?どうし…辛そ…わたし、なにか…?」
精一杯、彼自身を受け入れながら絵麻が棗を気遣い、声をかける。
「何でも、ないっ…つっ!オマエは、俺を…感じててく、れっ…!」
我慢して突き上げれば、彼女はその身を仰け反らせて、高い喘ぎをあげる。
(女の身体の中は酸性だと言うが…本当に…しみる…っ!それとも濡れてるせい、かっ…!?)
彼女から得られる快楽と、同様に与えられる息を飲む程の小さいが持続する痛み。
一昨日、二匹の猫の爪により、その身を傷つけられた棗自身。
今はその引きつる痛みを堪えながら、彼は今までしたことのない我慢をその身に強いていた。
(もうっ…アイツらの前では、絶対に出さない…っ!)
棗はそう心に誓い、自分を痛みつける深い海へと我慢を決めてより沈んでいくのだった――。
『トモダチは猫二匹』〜終わり〜
…棗、ごめん。
そして、棗ファンの皆様、ごめんなさいm(_ _;)m
元ネタはあるんです(猫に実際引っ掛かれた奴がいた)。
結構ヤバいらしいです。
ただ、この話を書いて、改めて別のヤバいことに気がつきました…。
棗…お前さん、ナマでやってるな…!!
いかん!いかんぞ!お母さんは許しませんよ!!
皆様、身体を繋げる時は近藤さんを忘れずに…!!
拍手有難うございましたm(__)m
…まじ、すみません…。
2014/02/25
藤堂市松 拝
〜拍手移動後の後書き〜
実はこの小話、初めはタイトルが違ってました。
元のタイトルは…
『コイビトは右手と猫二匹』
と言いまして…
恋人設定ではなく、本当に棗が自分で慰めてるだけのお話だったんです…。
えぇ、より棗に酷い設定だったんですよ。
あまりにも、なので変更してこの形になりました、とさ。
お読み頂き、有難うございましたm(__)m
2014/03/09
藤堂市松 拝