過去拍手『兄弟衝突』

□滑らかな肌に包まれて
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[拍手小話10]


「凄いな、コレ…風斗、だよな?」


マンションに来ていた棗は、リビングのテーブルに置かれていた、ある品物を見て呟く。


「触らないでよ。それ、姉さんにあげるんだから」

「アイツに渡すのかコレ!?」


思わず二度見してしまう。



その視線の先には、上半身裸の風斗が等身大でプリントされた、ビニール梱包された布地――


バーコード等の記載がある商品ラベルには


『添い寝だけで済むと思ってるの?シーツ』


と書かれてあった。


「fortteの今度のコンサートグッズの目玉。結構良い出来でしょ」

僕の写りも良いし、と風斗はご満悦の様子。


「いや、良い出来とかそういうんじゃなくてだな…」


なかなか理解の難しい品物に、棗の言葉が濁る。


(そういや、椿がアニメの女性キャラの描かれたデカくて長い枕を持ってたな)


アレと同じか、と微妙な部分はあるものの、一応自分の中で存在だけは受け入れられた。

風斗に言ったら「あんなのと一緒にしないでくれる!?」と怒り出すとは思うが。


「つか、アンタ、キレイにつるっつるねぇ風斗」

棗同様、久々にマンションに来ていた光がそのシーツの画を見て感想をもらす。

「つるっつるって、何がさ、オカマ?」
「オカマじゃないわよ、コレは女装」
「一緒でしょ」
「違うわよ」
「どこが?」
「アンタで例えると、アイドルと俳優くらいの違いがあるのよ」
「くっ…」
「諦めろ風斗。ひか兄にクチで敵うヤツはいない」


口達者の風斗であるが、流石に物書きとしてのボキャブラリーを有する光には敵わない。


「で!?つるっつるって!?」

クチで負けた風斗が苛立ち気味に再度聞き返す。
あぁ、と光は先程の会話の内容を思い出す。


「アンタのカラダ。胸毛ないとかは分かるけど、腕毛ないしワキ毛ないし乳毛ないし腹毛ないし、この様子だと脛毛もないんじゃない?」

「ちっ乳毛とか腹毛とか、もちろん胸毛とかあるワケないでしょ!?僕、アイドルだよ!?」

「腕やワキは生えるでしょうよ?」

「アイドルはムダ毛とかアウトなの!?剃ってるんだよ!」

「剃るのか!?大変だなアイドル!」

「そこ食い付かないでくれる!?スポ根野郎!!」


ぜーはーと息を荒げる風斗だが、


「剃るのか…いや、競泳の選手も抵抗減らすのに剃るって言うよな…陸上もそうなってたりするのか…?」
「オンナよりつるっつるのオトコって、何かヤじゃない?この辺とか、チラッと見えるくらいがオトコ臭くていいと思うんだけど」


兄二人はシーツを見ながら勝手に一人ごちる。


「ねぇ風斗、少しくらいギャランドゥあった方がフェロモン出てるっぽくてよくない?」


「…なんだよ、ギャランドゥって…」


もう勝手にしてろ、と言った感の風斗が投げやりに答える。


「え、ギャランドゥ知らないの?ギャランドゥって言ったらさ、この辺の」


と言って、シーツの画の、風斗の臍の下、ボクサーパンツのラインの上辺りを指差す。


「陰も」
「もーいい!言うな言わないで言ったらキレるから僕!!」

「…もうキレてるじゃない」


全くもう、ワガママなんだから、と言う光に、流石の風斗も脱力する。


「まぁ落ち着け。で、風斗、このシーツとやらは何でこんな奇妙なポージングなんだ?」

光につるっつる、と言われた風斗の画を見ていた棗が改めて尋ねる。

「は!?…あぁそれ。それはねぇ」

こう拡げて、上から被るようにするとー、動きを付けて説明する。

「僕に、押し倒されてる気分が味わえる、ってポーズだよ」



「却下」
「はい処分決定〜♪」
「ちょっと!なんでだよ!?」


リアルにゴミ箱行きにしそうな棗の前から慌ててシーツを取り上げる。


「そんなモン、アイツに使わせる訳にはいかないからな」
「そうそう、妹サンにはそんなの必要ないの!」


だから棄てるか事務所に持って帰るかしなさい、と言う光たちに対し、風斗はシーツを抱えて膨れっ面をする。


しかし、ここで退かないのが、幼い頃から芸能界で揉まれてきた下から二番目の彼だった。


「…そうだね、“兄さん”たちの言う通り、コレは事務所に持ってく事にするよ」


“兄さん”とわざわざ呼んだ事に対し、光と棗は、嫌な違和感を覚える。


「コレは僕のファンが僕の代わりにするものだもんね」


「風斗…?」
「ナニ考えんの、アンタ?」


口角を上げてニヤッと笑い、風斗は続ける。


「姉さんにはリアルの僕がいるからね…“兄さん”たちのアドバイス通り、このシーツじゃなくて、僕自身が姉さんを押し倒す事にするよ」


「アドバイスありがとう、“兄さん”♪」


さーて姉さんとこ行ってこよー♪と弾む足取りでリビングから出て行く風斗。



風斗が出て閉まった五階のドアが一瞬の間を空けて勢い良く開け放たれる。


「「却下だ風斗ーーっっっ!!」」



――その後、絵麻の元には、リアルの風斗ではなく、等身大風斗がプリントされたシーツが“兄”の手から渡されたと言う――



「…これ…わたしにどうしろ、と…?」



『滑らかな肌に包まれて』〜終わり〜


二日続けて毛ネタが…。

ちなみに、今のところ、もうひとつ毛ネタがストックにあります(え?もういい?)。


あと風斗シーツに対しての内容がありますが、


私は風斗シーツが欲しくてたまらない人です。

だって私にはリアル風斗はいないもの…くすん( ノД`)…

風斗シーツをマジ買うか迷い中での小話でした。


拍手有難うございましたm(__)m


2014/02/20
藤堂市松 拝



〜拍手移動後の後書き〜

もうひとつの毛ネタがこれの続きにあたるので、それの拍手小話upに合わせて、こちらを過去拍手に移動させました。

ちなみに、この時は迷い中だった風斗シーツですが…


あはははは( ̄▽ ̄;)


あとは拍手小話15後書きにて。


お読み頂き有難うございましたm(__)m


2014/03/07
藤堂市松 拝
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