過去拍手『兄弟衝突』

□いつか重なりあう未来へ
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[拍手小話4]


「ぃやっったーー!!」


椿が突然叫びだす。

「うんうん♪分かったー★」と、リビングの子機のボタンを押して電話を切る。


こっちは台本を読み込んでいるんだから静かにして欲しい…とは思うけど、椿がいる時点でそれは無理だと分かりきっている事なので、あえて口には出さない。


「どうしたのつっくん。いいことあったの?」

弥がそう尋ねると、椿はニヤニヤ…いやもうニヤニヤなんてものじゃない、デレッデレの表情をしていた。


…嫌な予感がする。


こんな顔した時の椿は、大抵良くない事をしでかす。
良くない、と言うと曖昧な表現だけど、むしろ悪い事が多い。


僕の不安をよそに、椿はその顔のまま、

「みなさんにビッグニュースでーす★」

と言った。


「まさにーと絵麻の子……女の子だって分かったってさー!」


それはもう、心底嬉しそうに。



「姪ですか!可愛いでしょうねぇ!」と素直に喜ぶ京兄。
「やっと男ばかり生まれる宿命の因果を断ち切れたのかな、我が朝日奈家も」と、因果だなんて珍しくもお坊さん的要素もある発言をするかな兄。
「わーいわーい♪おんなのこー♪」と無邪気に喜ぶ弥。
「…いや、ま…どっちだろうとアイツが子供産むことに代わりねーし…」まだ諦めてないの侑介。
「女……」いい加減そろそろ慣れよう昴。
「お祝い、女の子なら何がいいのかな?」相変わらず落ち着いてるね祈織。
「嬉しい…おしゃれ、させたい」真っ当な反応だね琉生。



…それに比べて。



「あーずーさー!どーしよー?俺、今日から妹萌え辞めて、いや妹萌えは辞めないんだけど、姪っ子萌えキャラ要素プラスしてもいーい!?ってかすべきだよね♪うんする!」


僕の半身は、おかしい方向に進もうとしている。



「『椿おじちゃんの声が好きなのー。おじちゃん、もっとお話してー』『いいよー』『あのねベッドで眠るまでご本読んで欲しいのー』『眠るまででも、眠ってからも、なんならこれから一生ずーっとキミの耳に囁いてあげるよ★本読むだけじゃなく、もっと色々…』『嬉しーおじちゃん、だいすきー!』『俺も大好きー♪』『おじちゃん、結婚してー!』『もちろんいーよー★』なんて展開になったらどうしよー!?ね!梓!俺どーしたらいい!!?」



「椿、前にも言ったけど、絵麻は戸籍上は妹だけど血の繋がりはないからセーフだったけど、姪は雅兄の娘でもあるから、血縁的にも法律的に無理だから。あと、その会話だと、姪はどう見ても幼女だよね。それ、更にアウトだから。色々な方面でアウトだから」


…と言ったところで、聞いてー、と自分の妄想のみを熱く語り続ける椿の耳には届いていないんだけど。


はぁ、と軽くため息をつく。


これからが色々大変だ。


椿が姪にインプリンティングを実行しないように目を光らせなくちゃ。



…棗に任せよう。




そして、きっと今も大喜びしている雅兄と、幸せそうな妹の姿に思いを馳せる。



皆が君を待っているよ。

だから元気に産まれておいで。



――そして願わくば、



椿の好きなものを無条件に好きになる僕こそが



未来の君を苦しめる存在になりませんように―――



「うん、その時はやっぱり棗に任せよう」


「んー?なんか言った、梓?」

「いや、なにも」



「姪っ子姪っ子〜♪」と浮かれ騒ぐ椿の様子に、僕も浮き立つ心を感じつつ、



その脈打つ心臓を抑えこむように、台本に再び目を落とした。



『いつか重なりあう未来へ』〜終わり〜


結局梓も同じ穴の狢、という小話でした。


雅臣EDエピローグ後の、梓視点。

全員出したかったんですが、棗はともかく、こーゆー『家族』ネタは、風斗と光は反応しなさそうなので外しました。


梓はね、真性Sだと思うし、下手すると(椿と、椿の好きなもの限定で)病み方向に進みかねないキャラかな〜とか思ったり。

朝日奈家では数少ない突っ込みとして欠かせない人なので、必然的に出番は多くなりますね。


拍手有難うございましたm(__)m


2014/02/06up
藤堂市松 拝



〜拍手移動後の後書き〜

実は一番お気に入りかもしれないお話です。

梓はちょっとヤバいくらいがいいです。
基本的に椿よりヤバいと思ってます。
そして私は、椿より梓派です。


お読みいただき、ありがとうございましたm(__)m


2014/02/17
藤堂市松 拝

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