薄桜鬼『裏』

□お背中流します〜左之助編〜
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「千鶴、背中流してくれねぇか?」
浴室より旦那様の声がした。
「はーい、今行きます」
以前から父の背中を流す事も、病に伏せっている患者の躰を拭き清めた事もある千鶴は、何も疑問も抱かずに浴室へと向かった。



『お背中流します〜左之助編〜』



「どうですか左之助さん?」
裾をめくり上げ、たすき掛けをした千鶴が、左之助の背中を流しながら尋ねる。
「あぁ、凄え気持ちいいぜ」
「良かったです」
首を後ろへ向け気味にそう答えれば、にっこりと喜ぶ愛らしい妻の笑顔。

しかし今は、その笑顔よりも、露わになった腕と足に目を奪われる。

着物を着たまま温度湿度 の高い浴室にいるせいだろう、千鶴の髪は額や頬に貼りついてしまっていた。

「なぁ千鶴…」
「何ですか?」
くるっと振り向き、彼女の貼りついた髪を払いながら、
「お前の背中も流してやろうか?」
優しく、“親切”と言う意味合いを全面に浮かばせながら、左之助はそう提案した。
途端に、浴室の熱気のせいではなく、千鶴の顔が真っ赤に染まる。
「いっ、いえ!私はいいですっ!」
「いいじゃねぇか。遠慮するなって!」
「えええ遠慮なんて、しっ、しっ、してませっ…!」
慌てて断りを入れる千鶴だが、左之助は退かず、尚も執拗に誘いをかける。
そして顔をぐっと近付けると、耳元で囁いた。

「まだ一緒に風呂入った事ないだろ…?…千鶴と風呂に入りたい…」
「あっ…!あのっ!」
極めつけとばかりに、彼女の露わになっている二の腕の内側を指で撫で上げた。
「ひゃっ!」
「な、いいだろ…?」


ここまで来ては、もう断り切れず、千鶴は分かりましたと恥ずかしそうに頷くと、着物を脱ぐ為に一旦脱衣所に下がった。

「…さて、コイツの出番だな」
左之助はニヤリと厭らしい笑みを浮かべると、自らの腰の下にある腰掛けをポンと叩いた。
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