過去拍手『薄桜鬼』

□貴方で満ちた私の全て
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〜貴方で満ちた私の全て〜
『貴方で私が満ちるまで』の続きにあたります。


産まれた我が子に『誠』の文字を与えてくれたのは千景だった。

腕の中で眠る幼子を、愛おしく見つめていると、背後から優しく抱き締められた。

「千景さん?」
「あまりそんな目で見つめるな。」
「はい?」
「そんな、愛しさを込めた瞳で見つめるな、と言っている」
「だって、千景さんと私の子供ですよ?愛しくない訳が…」

理由が分からず反論すると、千景は抱き締める腕の力を強めた。

「その名を与えたのは失敗だったか。」
「…何故…?」

軽く躊躇った後、彼は続けた。

「まだ、奴らがお前に愛されていると思い知らされる。」
「…確かに、今でも彼らを愛しています。」

そう返すと腕の力が更に強まる。

「でも、貴方とこの子に対する愛しさとは別です。彼らとは運命を賭する事の出来なかった私だけれど」

千鶴は背後の千景へと顔を向け、はっきりと告げる。

「何が起ころうと、貴方とは必ず共にあります。」
「千鶴…」

愛おしい彼女に口付け様と、力を入れた腕で抱き寄せる。


「…っふぎゃーーっっ!!!」

その途端、千鶴の腕の中の二人の結晶が激しい泣き声を上げた。

「あら、さっきまでおとなしかったのに!」
千鶴は母親の顔になり、立ち上がってよしよしと我が子をあやし始める。

抜けてしまった腕の中の温もりの残滓を掴む様に拳を握り締め、千景は小さく、


「…やはり邪魔をするか…」

あの名は失敗だったと、冗談まじりに呟いた己の言葉が、まさに現実となってしまったと、千景が本当に苦々しく笑いながら呟いていた。


〜終〜


千景と千鶴の子は勿論男子で、名前は、“誠を司る者”という意味で『誠司郎(せいじろう)』という勝手な設定です。
拍手ありがとうございました!


〜追記〜
08/10/12から10/21まで拍手公開していた、風間SSの続編です。
何故最初が風間だったのか、今でも自分が不思議です。

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