BROTHERS CONFLICT
□融点を迎えるチョコ・ホリック
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借りてきて、と頼んだDVDを引き取りに、姉さんの部屋に向かう。
「あ、風斗くん!今、手が離せないの。DVDは向こうに置いてあるから入って取っていいよ」
ドアを開ける前からそこら辺に漂っている甘い香り。
この香りに、うちのキョーダイたちは、変な期待を持たせられているんだろ。
部屋に上がり込むと、備え付けの小さなキッチンには、ボウルや計量カップなんかの道具と、基本的に茶色い食材。
しかも、やたらと大量。
「そんなに食べたら太るよ、姉さん」
僕がそう言うと一瞬、大きな目を丸くする。
「やだ、風斗くん!これはわたしが食べるんじゃないよ?」
ふふっ、とよくする笑いを浮かべる。
「…分かってるよ、バレンタインでしょ?」
この時期にチョコレートなんてキッチンにあれば、目的はそのイベントしかないなんて、バカでも予想できるよ。
「それにしても…ちょっと量が多すぎるんじゃないの?」
既に形になっているものに、まだボウルの中で溶けているもの。
1人2人分の量じゃないのはすぐに分かる。
「足りないくらいだよ。14人分だもん」
姉さんの言葉にため息が出そうになる。
その数、当たり前っちゃ当たり前なんだけど…
ん?
「14って、おかしくない?」
姉さんが僕らキョーダイ全員にくれるであろう事は、残念ながらも想定済み。
だけど、キョーダイは13人。
1人分、多い。
「…ウチのバカたち以外に、誰かあげるヤツでもいるの?」