BROTHERS CONFLICT

□Fan Call
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(――で、何で持ってないワケ!?)


先程の興奮が嘘のよう。

表情こそアイドルスマイルを維持しているが、明らかにテンションは下がっていた。

最前列で周りと同様にスタンディングで曲に乗る絵麻だったが、その手にはペンライトしか握られていなかった。


苛つく心を自覚しながらも、「ファンには最高のパフォーマンスを」と約束してしまった為、おくびにもそんな思いは表には出せない。

なにせ彼女は、誰よりも自分の感情の動きに聡いから――。


(ま、いっか…ずっと僕の動きだけ追っかけてるのは分かるし)


風斗が上手に動けば彼女も身体ごと自身の右方向を向き、下手に移動すれば左へと向きを変える。
会場を8の字になるように巡らされた通路を走る時も、視線を送れば彼女はいつでも自分を観ていた。


(ウチワ、持つの恥ずかしいって言ってたしね。今日のところは勘弁してあげるよ)


だが、風斗が大人しく勘弁等と納得する筈もなく、


(その分別の何かで我慢してあげる)

そう思いながら、風斗は『fortte』として『朝倉風斗』としての全力のパフォーマンスを演じた――。


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