BROTHERS CONFLICT
□開け放たれる、獣の檻
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その指の示す先を辿っていくと…
「…開いてるの」
「………っ!ちょっと!こーゆーのに突っ込むとか、アンタにはデリカシーってモノはないワケ!?」
慌てて後ろを向き、ジーッと音を立てて即座に閉める。
風斗の穿いているジーンズのファスナーが全開で、グレーのインナーがしっかりと絵麻の目に映ってしまっていたのだ。
「だ、だって!風斗くんは見せても平気なんでしょ!?」
「人を露出狂みたいに言わないでくれる?あれは衣装の下に見えてもいいインナー穿いてるからいいの!普段開いてたらヤバいでしょ?それくらい分かってよ!?」
全くもう、と恥ずかしさがあるのか、少し赤くなった風斗と、より赤くなってしまった絵麻。
モニターのスピーカーから『fortte』の歌声が流れる部屋で、二人はしばし無言になる。
「…いつから?」
「…え?」
「いつから…開いてたの、気付いてたのさ…?」
風斗はまだ背を向けたまま、顔だけ少し横に向けて絵麻に尋ねる。
「あの…えーと…」
「…い・つ・か・ら?」
横目で睨みつける風斗に、絵麻は小声で答えた。
「へ…部屋に入ってきた時…」
「最初から!?」
通りでソワソワと落ち着きない筈だ。
絵麻の挙動不審の理由が分かり、風斗は微妙な気分を味わう。
(ん?部屋に入った時…から?)
風斗の琴線にその言葉が引っ掛かる。
自分の中のある部分が、それを逃すな、と呼び掛けてきているのだ。
「姉さ…いや、絵麻」
ある部分
「…な、なに?」
それは
「つまり絵麻は、部屋に来た僕の、まず股間を見たりしたワケ?」
「っっっ!!!」
顔だけでなく、絵麻の手や、スカートから伸びる足まで、全身が真っ赤に染まる。
「ちっ違っ、違うっ!違うからっ!」
ブンブンと首と手を全力で横に振る絵麻に、風斗は先程の自分の感覚が告げていたものを理解する。
(捕らえた――!)
ある部分、それは、
風斗の中に住む肉食の――
“オトコ”
――という名の獣だった。