BROTHERS CONFLICT
□雛祭 CONFLICT
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学校から帰ると、マンションのリビングには、そこにはない筈のものが飾られていた。
「わたしのお雛様!」
キャビネットの上にお内裏様とお雛様が二人並んで飾られている。
「え?どうしてここに?」
「ごめんね、気付かなくて当日になっちゃって」
ソファーに座っていた雅臣さんが申し訳なさそうな表情を浮かべている。
「昨夜祈織がふと気付いてね、君のお雛様があるはずだって」
その声に呼ばれたように、キッチンから炭酸水をグラスに注いだ祈織さんが現れる。
「雅臣兄さんに麟太郎さんに聞いてもらったら、向こうのマンションに置いてあるって言われて。本当にごめん。男所帯はこれだから駄目だね」
少し困ったように眉根を寄せるので、わたしは慌てて首を横に振る。
「そんな!とんでもないです!ありがとうございます!」
「お礼なら棗兄さんに言って。実際に運んでくれたのは棗兄さんだから」
成る程、珍しい時間帯に棗さんの姿がマンションにあるはずだ。
「棗さん、ありがとうございます!」
「気にするな。俺は椿と梓に押し切られて運び屋になっただけだ」
「そーそー!頼んだの俺たちー★」
「棗は運んだだけだから」
「…オマエらは少しは気にしろ…」
相変わらずの三つ子さんたちのやり取り。
でも、三人ともわたしの為を思ってのことだから、棗さんには申し訳ないけど、とても嬉しい。
「そういう訳ですから、今晩はちらし寿司にしてみました」
キッチンから右京さんが飯台を抱えて出てくる。
「すみません、急に用意したので、干し椎茸を戻すのに電子レンジを使うと言う、邪道な手段を使ってしまいました」
「いえ、そんな邪道だなんて」
そもそも、わたしは料理に干し椎茸なんて使ったことがないから、戻す正しい手段なんて知らないですし…。
「わたしこそすみません、お手伝いせずに…」
「今日は貴女の節句ではありませんか。そんな事は気にしなくていいんですよ」
右京さんがにっこりと微笑んでくれる。