Novel

□夏の終わり、最後の音
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もうそろそろ夏が終わり秋が始まろうというこの時期、今日この日。
フラウとテイトは、近くの河川敷で行われる大規模な祭りに行く約束をしていた。



2人がフラウの家で寛いでいるときテイトからのお誘いがあったのだ。




―――……



「なぁ、フラウ」
「なんだ?」


愛しい恋人に呼び掛けられ、テレビからテイトに視線を移す。



「今週の土曜日、時間あるか?」
「……」
「べ、別にないなら…」
「あほ、ないなんて言ってねえだろ。
何だ?なんかあんのか?」


実のところ、フラウも同じ日にテイトを祭りに誘おうと思っていた。
だが、まさかのテイトからのお誘いかもしれないと平静を装ったのだ。


「えっと、その…」

なかなか先を紡げないテイトの言葉をフラウは辛抱強く待つ。


とうとう腹を決めたのか、真っ赤になった顔を上げフラウと視線を合わせる。
初めに呼び掛けて予定を聞いてからが少し長かった。


「祭りがあるんだ、この近くで。
だから…一緒に行かない、か……?」
「テイト…」
「…!フラウ忙しいよな!
だから無理なら別にいいし!」
「テイト」
「なんならハクレンと…」
「テイト!」


せっかく言葉に出来たのに1人話を進めてしまうテイト。
そんな、恥ずかしさと緊張でテンパるテイトを止める。


「テイト…
俺は忙しいなんて一言も言ってねぇぞ」
「…」
「大体、お前の誘いなら忙しくてもお前の方が優先だ」



頭を撫でながらテイトに話せば、ぅ、と詰まってから、別にオレ優先じゃなくてもいい…と俯いた。



「よし、じゃぁテイト?」
「…?なんだ?」
「俺と一緒に祭りに行ってくれないか?
今週の土曜日は時間が空いてるんだ」


微笑み訊ねれば、オレが先に誘ったんだ、なんて呟きながら嬉しそうに笑った。



そうして、2人で祭りに行くことが決まった。




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