Novel

□The harm that was out of order
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月の光が窓から差し込む。

その暖かくも冷たい光を、フラウは無表情に見つめていた。

棺桶の閉じた蓋の上、長い足は無造作に床に投げ出し、片手で上半身を支える。





かちゃり



そこへ小さな音を立てて扉が開いた。

その音にフラウは何の反応も示さない。
入ってきたのが、愛しいテイトだと振り向かずとも分かっているのだ。

テイトもテイトで、ノックもなしにさも当たり前のように扉を開け、フラウの元へと歩みを進めていく。




ペタリ ペタリ

   ペタリ ペタリ


冷たい回廊をテイトは裸足で来たらしい。



「靴くらい履いてこい」


テイトが自分のすぐ傍まで来て、フラウはやっと口を開いた。

視線も月からテイトへ移す。


「別に良いだろ。
感覚なんて特にないよ」


そう言って、ベッドに座る。

テイトの重みでスプリングがほんの少し軋んだ。



「ほんと無神経だよな」

「…その言い方なんか嫌なんだけど」

「まぁな」



そこで、ふっと互いに小さく笑いあう。


それが合図であったかのように、フラウは腰を上げた。

そしてベッドへと動き、ごく自然な様子でテイトを押し倒した。
テイトも別に気にした様子もなく重力のままに少し固めのベッドに倒れていく。



暫くの間、静かに見つめ合っていた二人。
だが、とうとうフラウはテイトに唇を寄せた。



額、瞼、頬、耳


順に口づけ、最後に殊更優しく唇に触れた。


それら全てをテイトはくすぐったそうに受ける。

そして、可愛らしく頬を染め優しく笑った。




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