Novel
□夏の終わり、最後の音
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―――……
屋台の多く並ぶ道筋には沢山の人がいた。
その道筋を逸れれば、まだ人は少ない。
これなら花火を見るための良い場所があるだろう。
「人、多いから絶対手ぇ離すなよ?」
「…うん」
言いながら手を握る力を強めたフラウに、内心(離せないし…)とか思いつつも頷くテイト。
「お」
いくらか人の波に押されて進んだとき、フラウが声をあげた。
そして、屋台の並ぶ道から逸れテイトを木の並ぶ遊歩道のベンチに座らせた。
「フラウ…?」
人の波に押されながらも、祭りを楽しんでいたテイトは少し不機嫌な顔をする。
「そんな顔すんなって。
ちょっと気になるもんあったからソコで待ってろ!」
さっき自分から手を離すなと言っておきながらあっさりと手を離し、どこかへ行ってしまったフラウ。
そんな突然の状況に、テイトは心細くなってしまった。
「なんだよ…急に」
しばらくして、夕日により輝く金髪が戻ってきた。
フラウが通り過ぎる近くの女の子達が頬を染め騒いでいるのが見えて、テイトはムッとしてしまう。
けれど、フラウの目は真っ直ぐ自分に向けられていて、自分のための微笑みだと思うとなんだか照れてしまった。
「…どこ行ってたんだよ」
先程の己の思考に照れながらもテイトは不機嫌そうにフラウに訊ねる。
そんなテイトを気にすることもなくホラ、とフラウに渡されたものは
「…メロンソーダ」
よく見れば、フラウは結構な量の食べ物を持っていた。
「さっき、メロンソーダって見えたから。お前好きだろ?」
ついでだから色々買ってきた、なんて言いながらフラウもテイトの横に座る。
焼きそばやたこ焼き、フランクフルトなどからリンゴ飴や綿菓子などまで。
端から見れば結構怪しいかもしれない。
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