Novel

□夏の終わり、最後の音
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フラウはテイトを迎えにきていた。
しかし、テイトはまだ用意が終わってないらしくリビングで待っているように言われた。
部屋は絶対に覗くな!という条件付きで。





カチャリ―…



「準備は終わっ…」

たのか?
と続けようとしたフラウの言葉が詰まってしまったのは、テイトの格好に理由があった。


「な、何だよ…」


顔を赤く染めつつ部屋から出てきたテイトは…


可憐で楚々としたテイトによく似合う藍色の浴衣を身に纏っていた。




「お前…
甚平じゃなかったのか…」


ぼう、とテイトを見つめたままフラウが呟くと、テイトはムッとする。


「別に良いだろ!
ダメなら着替え……」
「…可愛いな」
「え…」
「お前にすっげー似合ってる」



優しく微笑みながら近寄りテイトを腕の中へと囲うフラウ。


「やべー…
こんな姿のお前、他のヤツに見せたくねぇな」


コツンと額を合わせて少し悩むように笑う。



「なに言って…」


テイトは更に顔を赤らめる。
そして、フラウと視線を逸らせ呟いた。


「……オレよりお前の方が心配だ…
フラウの、甚平姿…カッコいい、し…」


そんなテイトの言葉に笑みを深くする。





チュ



「な…!?フラウっ!?!!」


突然のキスに慌てたテイトの手を掴むと、フラウは歩き出した。


「俺は、お前のものだから」


クスリと笑って、もう一方の手で優しくテイトの頭を撫でる。


「ほら、早く行こうぜ?
花火始まっちまうぞ」





フラウは俯き顔を赤くするテイトの手を引きながら、家を後にした。




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